オオナゾコナゾ

種子島ぴー/九州出身、東京在住。夫と二人暮らしです。旅行のこと、フィギュアスケートのこと、香港のことを中心に、右から左へ流せなかった大小の謎やアレコレを、毒も吐きながらつづります。

死に向かう強烈なエネルギーにあてられた草間彌生「わが永遠の魂」展。

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遅ればせながら、国立新美術館で開催されている草間彌生展「わが永遠の魂」を観に行った。私が草間彌生さん(以下敬称略)に興味を持ったのは、彼女の話す奇妙奇天烈な英語に衝撃を受けたことがきっかけだった。「文法が間違っていても堂々としている」といったレベルではなく、個体そのものが前のめりに相手に突っ込んでいくような、破壊力のある英語コミュニケーションであった。

 

さて、月曜日の昼間だというのに、会場はチケットを買うにも長蛇の列。彼女デザインのグッズが買えるお土産ショップも、レジが30分待ちの大行列であった。

 

メイン会場は、2009年から描き続けているという大作シリーズ「わが永遠の魂」。約2メートル四方の巨大なキャンバスに描かれた約130点がどーんと飾られた大広間は、圧巻としかいいようがない。

 

代名詞である"ドット"で描かれた赤・青・黄色・緑・オレンジのミジンコみたいな物体や人の顔の絵からは、「ポップカルチャー」という言葉が浮かんでくる。たぶん、ポップカルチャーではないと思うが、若いアーティストたちが描く絵よりも、はるかに今風で若々しい。

 

ビビッドカラーの花のアクリル製作も展示され、来場者は大はしゃぎ。かわいくポーズを決めて、セルフィーを撮るのに忙しい。

 

しかし、展示は徐々に彼女の過去にさかのぼる。幼少期の体験、幻覚、狂気、自殺未遂、恋人の死、病気……音声ガイドから流れる本人朗読による詩や自作の歌の歌唱。現在の作品からは想像できないくらい、草間彌生の世界はモノトーンに感じられた。

 

88歳の今も、「入院している病院からアトリエに通い、朝から晩まで一心に、食べることさえ忘れて描き続けている」「描きすぎて倒れたこともある」という本人の言葉。

 

もしかすると、この人は死を恐れているんじゃないか。と思った。一心不乱に描き続けているうちに、死んだことさえ気づかずにいられるんじゃないか。そんな感じだ。

 

たぶん、この解釈は間違っている。自分がこの数年、身内や友人の病気や死を経験したり、いつどんな目にあって死ぬかわからない社会にいる不安を感じたりしているからそう思えるのか。死を恐れているのは私自身なんだろう。

 

夢中に何かに打ち込んで、倒れるくらい働くなり、趣味に没頭するなりしていれば、死を恐れることもなく、自分が死んだことさえ気づかずにいけそうだ。これは、前向きな発見だった。

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会場の外に出るころには、エネルギーを吸い取られたのか、ぐったりして胃のあたりが気持ち悪くなっていた。しかし、ほかの来場者のみなさんは、元気いっぱい。お土産ショップで草間彌生デザインのパッケージで包装されたクッキーや黒糖かりんと、メモやハガキをしこたま籠に放り込み、30分待ちのレジに並んでいるのである。

 

私はヨロヨロと外に出ると、併設のカフェで無料のお水をもらい、新鮮な空気をすいに外へ出た。

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