オオナゾコナゾ

種子島ぴー/九州出身、東京在住。夫と二人暮らしです。旅行のこと、フィギュアスケートのこと、香港のことを中心に、右から左へ流せなかった大小の謎やアレコレを、毒も吐きながらつづります。

「競技に戻るのは想像したより大変で、打ちのめされたこともあったわ」。カロリーナ・コストナーISUインタビュー翻訳/前半

浅田真央さん同様、10代の頃から10年以上にわたって欧州のフィギュアスケート界をけん引してきた、イタリアのカロリーナ・コストナー選手。

休養シーズンの後にカムバックして、ソチで銅メダル。2年ちょっと競技を離れて再度カムバックし、欧州選手権でまたまた表彰台に立った(銅メダル)。

30歳になった今シーズン、(たぶん)平昌オリンピックに出るのだろう。30歳と聞いて、環境が違えば真央さんもきっと・・・なんて往生際の悪いことを考えてしまう。

でも、上手にキャリアをつなげているように見えるコストナー選手も、なかなか結果が出せない時期があって苦しんだり、元恋人のドーピングがらみで出場停止処分を受けるなど、山あり谷ありの競技人生だ。

ISUのサイトに、彼女が昨シーズンの心境、チームや後輩への思いを語ったインタビューが載っていた。前半、後半に分けて訳してみたいと思う。 

2016年末、2.5シーズンぶりにコストナーが競技に戻ってきた。

インタビュアー= Tatjana Flade さん

Featured Interview: Carolina Kostner (ITA) - ISU

 

 

Q 以前、「競技に戻ってきたのは"復帰"ではなく、キャリアを再開しただけ」と話してましたね。昨シーズンを振り返って、どうでしたか?

C  すばらしいことに、多くの喜びを感じられました。ブランク前と同じ場所から始めたわけではないので、何ができるか推測しづらかったんです。いろんなことを変えたから、どこにゴールを置くかを決めるのが難しかった。

大まかなゴールは、正しい練習環境を見つけて、自分が快適でいられるチームをまとめられればいいかな、と。その点は、とてもうまくいったと思います。だから、楽しかった。

でも、少し神経質にもなりました。競技のストレスに順応するのは簡単ではないんです。誰でも感じることだし、慣れなきゃいけないことだけど、訓練してどうなるものでもないので。

先を見越して、ビッグイベント(欧州選手権や世界選手権)の前に練習する機会が増えるのは、すばらしいこと。一方で、身体的には基本的にはゼロからのスタートなので、簡単なことじゃないんです。厳しいトレーニングに身体が慣れるには、ある程度の時間が必要だし、怪我を避けるために、徐々に身体を慣らしていく必要があるんです。怪我をすれば、多くの時間を失ってしまう。3歩進んで2歩下がるようなものです。

シーズンが終わって、今の状況がどうで、何が必要か、良かった点はどこで、もっとどうすればよかったのかを、チームでよく考えました。考えた結果、9月の競技会に絞って準備を始めました。

本当にすばらしいシーズンだったと思います。ヨーロッパ選手権と世界選手権の間に、自分がどう良くなったかを感じました。

世界選手権では、うまくその点をお見せできなかったかもしれませんが、演技の実施も良くなったし、ジャンプも安定してきたし、動きが滑らかで楽になったんです。大会では、緊張感で身体が少しこわばってしまったのかもしれません。競技会の数をこなしてしていけば、もっと良くなると思います。

今は、弱点克服に取り組む時間を楽しんでるの。うまく練習できてるし、「計画どおりにできたわ」と言って一日を終えられる。「(やり残して)今日はここまで。もう限界だから、明日、新鮮な気持ちで仕切りなおそう」なんて言わなくていい。

Q 今年はより高いレベルでスタートしてますね。

今年は3回転ジャンプに取り組んでいるけど、本当に去年は、2回転ジャンプの練習からしなければなりませんでした。(今年のほうが)楽しいし、やる気になれるわ。簡単なことではないけど、昨年は忍耐が必要でした。私は忍耐強い人間ですが、想像してたよりもっと忍耐を必要としたし、思っていたより過酷でした。

簡単なことではないとわかっていたけど、打ちのめされたこともあったわ。毎日、地面に倒れこんで、「これが私の道なの?」と自問自答するのよ。続けると決めたのは自分。だって、心の底からスケートを愛しているから。

練習を楽しんでいるし、最高のチームと組む機会を得ました。技術面ではアレクセイ・ミーシン、

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振付はローリー・ニコル。

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私にとってはすばらしいコンビです。

(二人といると)力まなくていいんです。「できるところを見せなくちゃ」なんてことは考えずに、ベストな結果を出すために学びたいことに集中していればいいんです。

そして、それを人々とシェアしています。スケーターは、すばらしい時間を創造する機会を得ていると思うんです。フィンランドのヘルシンキ(世界選手権)やチェコのモラビア(ヨーロッパ選手権)での試合を思い返すと、そういう瞬間だったと思います。

計画して、練習して、望んだからといって、思い通りになるものではないんです。いろんな要素が組み合わさって現実になったとき、素晴らしい瞬間が生まれるんです。それに、スケートをしている仲間たちと過ごせる時間でもあります。たくさんの友人たちに会って、共に過ごし、エキサイティングするの。

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Q 困難な時期があって苦労したと言ったけど、やめようとは思わなかったの?

思わなかったけど、ストレスに関しては、時間と共に葛藤はありました。「うーん、もう少し時間が必要かもね。自分にプレッシャーを与えすぎないで。毎日練習していれば、なんとかなるわ。うまくいくわよ」って、自分に言い聞かせる必要があったんです。努力は必ず報われる。頑張った分だけ、返ってくるわ。思い描いた通りにいかなくても、成果が目に見えなかったとしても、必ず何かを得られるんです。

そして、必ずしも自分たちで決められるとは限りません。今日では、私たちはスーパーマーケットに行って、ほしいものを手に入れるのに慣れています。手に入るまで待つ必要はないですよね。でも、練習ではこう言わなくちゃいけない日もあるんです。「オーケー、私はいまこの地点にいるわ。今、何ができる? 何か別のことができる?」。そして、もし効果がなかったら、効果がなかったっていうだけ。それほどプレッシャーのあることじゃない。

Q 無理にやらなくてもいいということ?

そうです。強制されないというのは、すばらしい気分なの。ほんとに、自分で決めさえすればいいのよ。

それに、引退のときが必ず来ることはわかっています。私のいとこであるスケーターのイゾルデ・コストナーが話してくれたことがあるの。「もうやめたいと、自分ではっきり思う瞬間が必ずくる」って。私はまだ感じていないの。いつかその時が来て、人生の新しい章が始まるでしょうね。それまでは、競技が私に今できる唯一のことだし、気持ちは定まっています。

私はスケートを若いスケーターたちにつなげようとしているし、「スケートができることは恩恵なのだから、最高のものを目指しましょう」って話しているわ。一般の人たちは、毎日オフィスに出勤して働いています。私たちは、あちらこちらへ行って、人々を感動させ、旅をし学ぶことができる。若い世代の選手たちに、そのことを伝えたいんです。

振り返ってみると、ちょっぴり残念に思うのは・・・私たちは、多くのメンターとしての前例を持つロシアのように、恵まれてはいませんでした。とりわけイタリアでは、アイスダンスのBarbara Fusar Poli、Maurizio Margaglio、Federica Faiella、Massimo Scaliと私が、ほぼゼロからスケートの礎を築いてきたんです。

Q その通り。ロシアでは、若いスケーターたちは憧れの対象がどのように練習しているか見ることができるわ。

そうですよね。私の少女時代は、そうではありませんでした。私は若い女の子、男の子に(特に女の子に)、何かを残せると思うんです。彼らを応援し、スケートの楽しさを思い出させてあげられる。イタリアでだけでなくてもね。

時に、うまくいかないとき、計画しても価値がないと感じることがあります。失敗したとき、自分たちはダメなんだと感じることもあります。でも、それは間違いです。誰もがすばらしく、美しい。同じことをもっとよくできる人もいる。うまくできない人もいる。いい1日を過ごす人もいれば、最悪な日を過ごす人もいる。でも、スケートを離れれば、そのことが人間を変えるわけではないんです。

Q そのとおりね。人それぞれに価値がある。

とても重要なことです。自分には価値がないという感情は、時に若い女の子たちに、陰鬱な気持ちや拒食症を引き起こすの。危険なことだし、スケートは健康的でポジティブなスポーツだと指摘することは重要だと思うわ。常に素晴らしくて楽しいかなんて、関係ないのよ。

---前半ここまで

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