オオナゾコナゾ

種子島ぴー/九州出身、東京在住。夫と二人暮らしです。旅行のこと、フィギュアスケートのこと、香港のことを中心に、右から左へ流せなかった大小の謎やアレコレを、毒も吐きながらつづります。

Golden Skate訳。なぜか素人の私と一致する、ミーシン大コーチのルール変更に対する見解。

大きなルール変更が予定されています。

こんばんは。晴れた日に布団を干すと、しあわせな気持ちになれる種子島ぴーです。

 

さて、6月2日から、ISUの会議でルール変更が協議されています。
それをけん制するためか、けん制するには遅すぎるので、遠慮してタイミングをはずしたのか、Golden skateにアレクセイ・ミーシンコーチのルール変更に対する見解が載っていました。 


コーチとしてもフィギュアスケート技術の研究家としても、御大と呼ぶにふさわしい大コーチですが・・・なぜか、GOEの幅とかジャンプの基礎点とか、「素人の私と同じ意見だー」と思う点が多く、興味深かったのでざっと抜粋意訳します。

たぶん、同じように感じていらっしゃる方は多いと思うのですが、誰がどこでこのようなルール変更を求めて、議論のテーブルに上がっているのでしょうか。
 

「ルール変更によって有利になるのは○○選手」というような話もチラホラと出ていますが、有利になる人がわかっているルール変更もおかしなもんだと思います。優秀な選手は、どのようなルール変更にも負けずに乗り越えていくのだとは思いますが。
*個人的な翻訳であり、内容についてGolden Skateと記者のTatjana Fladeさんは、一切の責任を負っておりません。

 

ミーシンコーチ、ルール変更後の恣意的なジャッジへの注意を喚起。

goldenskate.com

恣意的な審判が、競技の発展を妨げないことを願う。

コーチとしての生ける伝説アレクセイ・ミーシンは、来る国際スケート連盟のルール変更提案が、恣意的な審判を助長し、スポーツの発展を妨げるかもしれないと警告する。

 

「私の記憶では、コーチをしている間に、2つの大きな変化があった。一つは、コンパルソリー部門の廃止、もう一つは、新採点システムの導入だ」と、ロシアのプルシェンコをコーチして、2006年の金と2014年の団体金を含む4つのメダルを取らせた77歳のミーシャは話す。

 

「あれらの変化は、スポーツとしてのフィギュアスケートをまったく変えてしまった。よくなった部分もある。しかし、いくつかの点では、より悪くなってしまった」

「『誰に才能があり、誰に才能がないかを審査する点』は、変わってしまった。(コンパルソリーがなくなったからか?)。『誰がいいコーチで、誰が悪いコーチか』が変わってしまった。(点数を取る戦略に長けたコーチがよしとされることを指すのか?)。

『誰がいい審判で、誰が出来の悪い審判か』も変わってしまった。なぜなら、彼らはフィギュアではなく、ジャンプをジャッジしなくてはいけなかったからだ。新採点システムは、フィギュアスケートをよくするためにつくられたものではなく、採点を簡単にするためにつくられたものだった

 

フィギュアスケートの生体力学について何冊か本も書いているミーシンは、新システムによって、スピンやフットワークのような要素の創造性は失われたと感じた。

GOEの幅を-5~+5に広げることには懐疑的。

GOEの等級を-5~+5にするという革新性を持つ3度目の大きな変化について、ミーシンは懐疑的だ。

「この変化は、審判の客観性に大打撃を与えると思うね。+3と+4と+5に、差を付けることなんて不可能だろう。(素人の私でもそう思います! そんな採点技術がある審判はいないのでは?)。基準がないよ。技術審判が紙に書くだけ。でも、基本的にジャンプの跳び方はみんな同じだから、それほど差を認めることはできない」(中略)

 

「友人である審判は+5をくれて、敵は+1や-点をつける。そして、+5という加点は、勝敗の行方を決定づける」

 

ミーシンは、現行の+3~-3のGOEで十分だと思っている。そして、現在、何人かのトップ選手が、要素に対する+のGOEを適切に得ているわけではないことを、よくないと思っている。

「ダメなダブルアクセルを跳ぶ女子選手もいるが、にもかかわらず、彼女たちは+2の加点をもらっている」と、ミーシンは指摘する。

 

「したがって、+5の評価システムは、大打撃だ。トップの選手たちは+5の評価を受けて、トップでない選手たちは、0やーのGOEを得るだろう。『地獄への道は、善意で舗装されている』(良かれと思ってやったことで、ひどい結果になる)。」

 

「競技会で新ジャンプを跳ぶモチベーションが必要」

1965年からスケートをしているミーシンは、ジャンプの基礎点についての変更と、4分の一の回転不足でアンダーローテーションが取られることにも批判的だ。

 

今までは、4分の一以上の回転不足だった。ミーシンは、カメラのアングルやどのようにジャンプが記録されたかによって、差が生じると指摘する。実際に回転不足だったジャンプが回っているように見えたり、その逆もあるだろう。

また、セント・ペテルスプルクのレースガフト民族国家大学で、体育文化、スポーツ、健康の教授もつとめているミーシンは、ミスに対するペナルティがそんなに大きければ、スケーターたちは、新しいジャンプを学ぶ意欲がなくなるだろうと感じている。


「競技会で新しいジャンプを跳ぶモチベーションが必要だ」。

 

何十年にもわたったフィギュアスケートのテクニックを研究し、世界中で使われている、ジャンプを教えるための練習と方法を開発したミーシンは言う。

 「競技会でそのジャンプは跳ばないとなれば、選手がジャンプを習得するスピードは遅くなる。競技会で跳ぶとなれば、速くジャンプを習得することができる」

「3回転ルッツと4回転ルッツの間には、大きな差がある」とも指摘する。

「3回転ルッツを跳ぶ人は1000人いる。が、4回転ルッツが跳べる人は、10数人だ。4回転ルッツのほうが、100倍難しい」(中略)

挑戦する勇気を、選手から奪ってはいけない。

彼はまた、同じ種類の4回転ジャンプをプログラムで一度しか跳ぶことができず、コンビネーションジャンプの中でも跳ぶことができないという提案にも賛成していない。

(中略)

たとえば、2018年3月の世界選手権の男子フリーで、何人かの選手は4、5回転倒した。(宇野昌磨選手の演技も念頭にある?)。ミーシンは、4回転の数を制限して、彼らが挑戦する勇気を失わせる必要はないと感じている。

「現行のルールは、とてもよく対処していると思っている。世界選手権で、適切でない順位だった選手がいたかい?  進歩を止めなければ、次のシーズン、(4回転ジャンプの?)ミスは二度と起こらない。量は質に変わっていく。次のシーズン、大きな転倒は起こらない。うまくなるから。それが、人生の進化というものだ。フィギュアスケートだけじゃない。自動車もコンピューターもアスリートも、あらゆることが向上するのだ」

(ミスこそ成長の糧。何度でも失敗させてやれ、という意味か? 違ったらすみません)


ミーシンは、スケーターが4回転ジャンプを跳びすぎるのを阻止するために、ルールを変える必要はないと感じている。スケーターたちは進歩し、次のシーズンにはジャンプがより安定すると信じているからだ。ミスも転倒も減るだろう。


著名なコーチであるミーシンは、大方の改革に反対ではなく、改革に取り組んでいるISUの職員たちの努力も尊重している。しかし、慎重なアプローチを勧めている。

 

「代数との調和を判断しようとすることは、難しい仕事だろう。(数字と演技を完璧に一致させようとするのは難しいということか)。採点システムを完璧にしようとする流れは自然なこと。しかし、熟慮することと、段階的にアプローチすることが求められる」


「一つ、指摘したいことがある・・・ISUはしばしば、保守的であるという批判を受けてきた。しかし、保守的であるというのは、ISUのいい面だと思っているよ。フィギュアスケート界は、何千人もの人で構成されている。選手、コーチ、審判、メディア、観客。このような大きな船は、激しく揺さぶることはできないものだ。」(完)

 

最後の、「たくさんの人が乗っている大きな船は、激しく揺さぶることはできない」という話は、まさにその通りで、今回のルール変更によって、選手生活を引退する人、コーチの変更を検討しなくてはならない人、審判の適性がなくなる人(笑)、表彰台に上がれなくなる人、チャンスが生まれる人、フィギュアスケートを見るのを止める人など、いろいろな人の人生を変える可能性があります。

さて、どうなるでしょうか。