オオナゾコナゾ

種子島ぴー/九州出身、東京在住。夫と二人暮らしです。旅行のこと、フィギュアスケートのこと、香港のことを中心に、右から左へ流せなかった大小の謎やアレコレを、毒も吐きながらつづります。

香港ひと昔話(1) トイレ求めて三千里。待っていたのは鍵のかかった扉だった。

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香港で急性膀胱炎になりかかる日本人観光客は、多いらしい。

かくいう私も、何度、膀胱が破裂しそうになったことか。

 

香港の室内は、どこも冷房がかなり効いている。昔は、各家庭に冷房がなかったことから、冷房をキンキンにきかせることが、伝統的なサービスの一環になっているらしい。

 

設定温度はだいたい5度。冷蔵庫の中にいるような冷え冷えのレストランで、飲茶だなんだと水分をガブガブ摂取していると、トイレが異常に近くなる。

 

一回トイレに行くと、30分もしないうちにまた行きたくなる。

 

ところが、香港には公共のトイレがとても少ない。日本なら、駅に駆け込めば必ずトイレがあるけれど、香港の地下鉄にはない。さらに驚いたことに、一般的なビルのトイレには、鍵がかかっているのだ ! これは大変な衝撃であった。

 

ある時、買い物をしている途中で、ものすごくトイレに行きたくなった。天井に視線をうつし、必死にトイレのマークを探したけれど、どこにもそれらしきものがない。ジョルダーノなどのテナントが入った、そこそこの規模の商業ビルにもかかわらず。

 

「そんなバカな。絶対どこかにあるはずだ」と思って、ビル中を グルグル回っていると、非常口らしき通路の奥に、トイレと思しき場所を発見。

 

喜びいさんでドアを開けようとすると、これがびくともしないのだ。そもそも、ドアに取っ手がない。鍵穴だけあって、鍵を差し込まないと開かない仕組みになっているのだ。

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「えー、マジ?!」。トイレという空間そのものに鍵をかけるとは、なんたる非常 !

 

限界ギリギリ、泣きそうな顔をして「洗手間喺邊度呀?」(トイレはどこですか)と聞くと、顔面蒼白の私を哀れに思ったのか、一人の小姐がオフィスまで鍵を取りに行って貸してくれた。

 

香港では、一般的にビル内のトイレは、テナントに入っているお店や会社に専用の鍵が支給されていて、従業員以外は使えないようになっている。

 

語学学校でさえ自由にトイレを使えなかったのには、びっくりした。授業が終わるたびに「トイレの鍵貸してくださ~い」と事務所に一声かけていくのは、なかなかに恥ずかしかった。しかも、トイレで用をたし、ほっとして外に出た瞬間、鍵を中に置きっぱなしにしてしまった事に気づいて大慌て、なんてこともしょっちゅうだった。

 

「なんで、こんなめんどくさいことをするんだろう? そもそも、トイレを貸さないなんて、みみっちいんじゃないの?」

 

しかし、後に理由が分かった。香港のトイレは汚い。 すさまじく汚い。トイレットペーパーがないのはもちろん、便器の上にはこれでもかってくらい、お〇っこが垂れていたり、便器の周りがびしょびしょだったり。使い終わった紙や大〇さえも床に落ちていることもあった。

 

香港人でさえも、「香港人は自分の家はきれいにするのに、公衆の場をきれいにしようという気持ちがない」と嘆くほどだ。とても、赤の他人にトイレなんて貸せないのである。

 

私が一番疑問に思うのは、 便座の上に靴の足あと👣が付いていることが、 けっこうな頻度であることだ。一説には、便座の上に靴を履いたまましゃがんで、用をたしている人がいるらしい。

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しかし、それでは、一歩足を滑らせれば足ごと便器に突っ込むわけで、卓越したバランス感覚が必要とされるはず。その話を聞いてから、トイレから出てくる人の足元を見るようになったのだが、便器内に落ちたと思しき、靴が ビショビショの人を見かけたことは、まだない。

 

このようにトイレ探しに苦労するので、レストランで食事をした後は、必ずトイレで用をたしておくようにする。が、レストランのトイレがきれいかと言われれば、これまた食欲減退間違いなしの汚さだったりすることも。

 

庶民的な酒樓(大きな中華レストラン)なんかだと、トイレが詰まっていて、ポリバケツの水を手桶にくんで、前の人のものを流す、なんてこともある。食事の前後にトイレに行く場合は、くれぐれも周辺の景色を視界に入れないように心がけている。

 

近年は、超大型商業ビルがあちこちにできて、近代的な開放型トイレも増えた。しかし、広いビルの中でトイレを見つけてたどり着いても、出てきた直後に室温5度の寒さにやられて、再びトイレを探すはめになるのである。

 

トイレが近い人にとって、香港での悩みはつきない。

*ひと昔前の愛すべき香港滞在記をまとめたものです。現在とは変わっている点があることをご了承ください。