背中に赤い発疹ができた。
虫刺されかな、と思ったけど、帯状疱疹ってこともあるよな、と思って皮膚科に行った。受付で渡された問診票には、「帯状疱疹の心配があり受診」と書いた。
診察室に入ると、「該当する箇所を見せてください」と、20代とおぼしき女医さんは言った。
服を脱いで背中を見せると、「あ、帯状疱疹ですね」。
近づいて視診するでもなく、触診するでもなく、パソコンに向かって症状を打ち込むと、画面を処方箋記入フォームに切り替え、薬の種類と個数をプルダウン。
That's it !! 終了である。
友人に帯状疱疹になったことを伝えると、「私がなったときは、リンパも腫れて、お医者さんに1週間安静って言われたよ」とのこと。
そういえば、あの女医さんは、「ほかの箇所にも発疹が出ていないだろうか」と視てくれることはなかったし、「本当は虫刺されか別の発疹ではないか」と、近づいて確かめてくれることもなかった。
パソコンの前に座ったまま、患者との距離1メートルをキープし続けたのである。
最近、立て続けにこういう医者に会った。
胃の調子が悪くて消化器科をたずねたときは、フランクな感じの30代の男性医師だった。
私「吐き気がして、昨日から何も食べていないんです」
医師「あー、ウィルス性の胃炎かもしれないね。この時期、多いのよ」
私「ウィルス性ですか?? 前の晩に飲み会で暴飲暴食したので、そのせいかもしれないと思ったんですが・・・」
医師「あー、飲みすぎか。じゃあ、胃が弱ってるのかもしれないね。急性胃炎だね。点滴しとこうか」
私「急性胃炎ですか。頭痛もするんですが・・・」
医師「じゃあ、頭痛取る点滴も混ぜとこう。おーい、看護師さん、〇〇さんに点滴お願い」
・・・その医師は、「クビのリンパを触り、喉の奥をアーンし、アッカンベーをして胸に聴診器を当てる」」という、昔からの儀式をすることはなかった。私の訴えを聞いて、判断を下しただけである。
「自己申告制の医者」。そんな言葉が頭に浮かんだ。
「自己申告制」と言えば、春先に喉の不調で受診した内科のヤサ男系医師も同じだった。
私「喉が痛くて声が出にくいんですが」
医師「風邪だね。熱は何度あるの?」
私「熱は35度7分くらいです」
医師「熱はないか。頭は痛い?」
私「痛くないです」
医師「鼻は出る?」
私「出ません」
医師「じゃ、咳喘息だね。気温の変化が激しい時期になる現代病で、知識のない医者は風邪と間違えて診断しちやうんですよ」
そういうと、ヤサ男系医師は、いかに自分が知識に長けているかをトートーと語り、ぜんそく薬の吸引方法を私に伝授して、診察は終わった。
しかし、あんなに長く語るのであれば、せめて「クビのリンパを触り、喉の奥をアーンし、アッカンベーをして胸に聴診器を当てる」という例の儀式くらいしてくれてもよかったのではなかろうか。
彼もまた、パソコンの前から1ミリたりとも移動することはなかったのである。
こう立て続けに触診しない医者に会うと、「現代の医学では、これが普通なのだろうか」と錯覚しそうになる。最近の医学部では、「患者を触診、視診すると判断を誤るから、してはならない」とでも教えているのだろうか。
それとも、アメリカのドラマの影響か?
以前、アマゾンで視ていた人気ドラマシリーズ「ドクター ハウス」では、ハウスという人間嫌いの偏屈な医者が主人公で、患者を見もせず、会いもせず、次々に難病を治していくのであった。
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ただ、ハウスは天才であったし、視診、触診をする優秀な助手が何人もついていたし、最新設備の整った総合病院で、「診断」⇒「治療」⇒「診断の誤りで患者が死にかかる」⇒「症状を聞いて判断修正」⇒「別の治療」⇒「再び患者死にかかる」を繰り返すことが許されていたのである。同じことをフツーの医師にしてもらっては、たまらない。
はたして、触診しない現代の医師たちは、自分の知識を過信しているのか、それとも単なる人間嫌いで、「医者にはなっちゃったけど、患者には興味がない」という人種なのだろうか。