資生堂が「表情プロジェクト」なるCMをばんばん流しているけれど、しわができるのを気にして笑わない、怒らない、泣かない人なんて、この世にどれだけいるのだろうか。
「資生堂調べ」によると、「しわを気にして本来の表情が出せないと答えた人は約半数」というのだが、本当に? 一般人で?
それよりも、「歯」である。
歯並びが悪かったり、色がくすんでいたり、歯が抜けたり欠けたりしていたら、口を開けるのが嫌になるし、人と話すことさえ苦痛になる。
というのも、少し前、私は前歯が小さく欠けてしまっていた。
歯医者によれば、寝ている間に激しく歯を食いしばっているせいだそうだ。
欠けた部分はわずかだが、鏡でマジマジと見ると歯の色も汚い気がして、全体的にみすぼらしく感じられた。こうなると、人と話すときに歯が気になって仕方ない。
上唇や下の先で、なんとか欠けた部分を隠せないかと無駄な努力をするうちに、あまり口を開けないようになっていった。
なんとかしないと仕事にも差し支えるので、最善策を求めて、数カ所の歯医者さんをまわってみることにした。
一軒目は、ホスピタリティが自慢の歯医者A。
「ははーん」と歯全体をチェックすると、
「あなたに必要なのは、性格を変えることです。歯を食いしばる癖がある人は、神経質なので、小さなことにクヨクヨせず、おおらかな性格にならないとこれからも歯は欠け続けます」と、説教じみたことを言う。
注)イラストの字が危ない人が書いたみたいになっているのは、マウスで書いているからです。
無理だろ、それは!!
正論を言う人は苦手なので、金さえ払えば現実的な対応をしてくれる歯医者Bをたずねてみた。
「とにかく、前歯をきれいに見せたいんです」と懇願する私を見て、キラリと歯医者Bの瞳が光った。
「これ以上欠けないように、数本の歯をラミネート板のようなもので覆って、縦に溝(ミゾ)のような線を描いて、歯のすきまに見せる方法があります」という提案だ。
「筋を入れて、別々の歯に分かれているように見せるんですか?!」。
それはまさに、韓流芸能人もやっているという方法で、人工的かつ不自然な仕上がりが楽しめるやつだ。お値段11万円。
「むーん」と、言葉にならない音を発して、私は歯医者Bを後にした。
最後にたずねたのは、最新技術が売りの渋谷にある歯医者C。
歯の表面に極薄のセラミックを貼る「ルミネアーズ」という技術を持っている。ソフトコンタクトレンズのような薄い膜で歯の表面を覆うので、欠けた部分をカバーでき、見た目も美しく変身できるという。
ただ、値段がなかなか高い。前歯であれば、施術費用は1本13万円くらい。歯の位置によって値段が違うが、28本の歯を全部ルミネアーズにすると300万円ほどになる。
それはムリなので、とりあえず前歯2本だけをルミネアーズにしてもらうことにしたが、周囲の歯と白さを合わせる必要がある。
というわけで、ここでようやく表題の「ホワイトニングしたら、歯がシマシマになっちゃった話」である。
ホワイトニングしたら、歯がシマシマになっちゃった話
せっかく、高いお金を出してルミネアーズをやるからには、なるべく白い歯にしたいと思うのが人間の心理。
しかし、白すぎると周りの歯との差が大きすぎて、不自然になってしまう。
「先にホワイトニングをしますか? ルミネアーズの前にやる人、多いんですよ」と歯医者C。
おぉー、そういう手があったか! 私は、4万数千円するホワイトニングに飛びついた。
頭の中の仕上がりイメージは、こんな感じ。
よく、広告に載ってますよね。「ホワイトニング前」と「ホワイトニング後」の写真が。
「元の歯の色から何段階白くなるかは、人によって違います」と、施術前に説明はあった。もっともなことなので、これは了承。
施術は2回に分けて行われ、まずは1回目の施術。
なんとなく白くなったようなならないような感じだが、2回目が終われば白くなるのだろう。
2回目の施術。う~ん? これは・・・
「何段階、歯が白くなるかは、人によって違う」という話は公に聞くが、知られざる事実があった。それは・・・
広告のように、歯の表面が一律に白くなるわけではありません。
歯の変色や黄ばみの原因は様々だ。
お酒やたばこ、お茶やワインなどの色素が長年にわたって蓄積する。これは、一般的に知られている。
そのほかに、歯に亀裂が入り、そこから色素が入ったり、怪我や病気で歯の内側から変色している場合もある。
さらに、ここがポイントだが、小さいころまたは母親の胎内にいるときに、ある種の抗生物質(テトラサイクリン系の抗生物質)を服用すると、歯がグレーっぽくなるという。
「テトラサイクリン歯」というそうだが、「風邪といえば抗生物質を処方する」という傾向が日本にはある。私も、小さいころから「風邪を引いたら病院で抗生物質」を繰り返してきた。
なので、抗生物質、コーヒー、赤ワイン、カレーなど、1本の歯の中に様々な原因による変色や黄ばみがあり、色素が沈着した時期も違う。ホワイトニングの薬剤で何がどれだけ落ちるかは、予測不能なのである。
というわけで、部分的に白くなったものの、極端に言うとこんな感じの仕上がり。
それでも、一番白くなった部分を計測して、「3段階くらい白くなりましたね」と、歯医者Cは微笑むのであった。
なんかシマ馬な気分だ。みなさんも、ご注意あれ。