(*2017年8月19日のブログ記事です)
上野動物園のパンダの赤ちゃんの名前募集に、32万2581件の応募があったそうだ。
パンダの赤ちゃんは、かわいい。
毎日、黄色いメジャーでサイズを測られている姿がかわいい。
ぜんまい仕掛けのパンダ人形そっくりに、カクカク動く姿がかわいい。
あのパンダに自分が考えた名前が付けば、きっと人生バラ色だろう。
でも、私は応募しませんでした!!
なぜなら、30年近く前の、ほろ苦い思い出があるからです。
あれは、東京の多摩動物園に初めて2匹のコアラが来た年のこと。
コアラの名前が公募された。
資料を探すと1984年ごろのようだが、古い話なので細部に記憶違いがあることは、ご容赦願いたい。初代のコアラはオスだったようなので、2匹のうちの少なくとも一匹はメスだったという私の記憶とは、一致しない。
とにかく、私の母がいつのまにかコアラの名前を送っていて、「選ばれたので授賞式に来るように」という連絡がきたのであった。
母は、自分が考えた名前がコアラに付くものと信じていた。そして、娘である私を連れて、はるばる多摩動物園まで行ったのである。
授賞式典には、驚いたことに、10人近い受賞者が集まっていたと思う。コアラは2匹なのに、なぜ?
「コアラ=ユーカリ」「コアラ=オーストラリア」という単純なイメージしか当時の日本人にはなかったので、
ユーカリだから「ユリ」、「ユカ」、オーストラリアだから「シド(シドニー)」みたいな感じで、同じ名前を書いて応募した人が何人もいたからだ。
さて、オーストラリア大使館の人も来ていた(ような気もする)し、東京都のお偉いさんなども集まっていた(ような気もする)式典で、いよいよ発表の時がきた。
「まず、惜しくも次点に選ばれた方々を表彰させていただきます」という司会者のコメントに、「えっ、次点?」「選ばれたわけじゃないの?」という落胆の空気が、参加者の間で流れた。
「応募名 ユリ。田中さま、おめでとうございまーす」。
「応募名 ゆか。斎藤さま、おめでとうございまーす」。
*すべて仮称です。
という風に、採用されなかった人々の名前が読み上げられ、副賞が渡されていった。
受賞者たちの表情はビミョーだった。何が「おめでとう」なのか? 確かに、期待して多摩の奥地までいそいそと出かけてきたのは、おめでたいと言えば言えるのだが。
そして、ついに、「第一位当選者」の発表になった。
名付け親は!!! ダダダダダー(ドラムの音)
生後8カ月の赤ちゃんでーす。
ええーっ???
赤ちゃんにハガキは書けないだろう・・・
マイクの音響に驚いてギャギャン泣く赤ちゃんを抱いて現れた夫婦は、拍手を浴びながら賞品を受け取り、記念撮影のカメラに収まった。
そのとき私は、大人の世界を見たのである。
赤ちゃんの名前で年齢を書いて応募すれば、採用してもらえるのではないかという親のたくらみ。
赤ちゃんを名付け親にすれば、「わっはっはっ」という笑い声と共に、日豪友好や動物園の明るい未来が演出できるのではないかという、審査員の大人の満場一致案。
だから、今回の上野のパンダの名前で・・・
一生懸命考えて気のきいた名前を応募したクリエイティブなあなた、落選です。
平和や明るい未来、日中友好をベースにした王道の名前で応募した30代~70代のあなた、落選です。80代、90代なら、話題性でチャンスあり。
ずばり本命は、アオアオ(奧奧:オリンピック)、ミンミン(明明)、ピンピン(平平)、ユェンユェン(縁縁)といった平凡な音を連続した名前で親が応募した、双子または三つ子です。五つ子だったら、名前はどうあれ採用確定と致しましょう!!
もしくは、名前はすでに決まっていて、同じ名前を書いてきた人の中から、子どもが選ばれると思います。
さて、私のこの性根の腐り切った予想は、的中するでしょーか。(するか!)