オオナゾコナゾ

種子島ぴー/九州出身、東京在住。夫と二人暮らしです。旅行のこと、フィギュアスケートのこと、香港のことを中心に、右から左へ流せなかった大小の謎やアレコレを、毒も吐きながらつづります。

社長は言った。「プエラリア・ミリフィカで、胸も会社も大きくする」と。

「プエラリア・ミリフィカを原材料に用いて、バストアップなど美容効果をうたった健康食品で健康に影響が出たという相談が増えています」


先日、ニュースを見ていたら、こんな報道をやっていた。

 

プエラリア・ミリフィカ・・・

 

えーと。どこかで聞いたことがあるぞ。そうだ、胸が大きくなるっていう魔法の植物だ!!

 

 

突然、忘れていた記憶がよみがえってきた。


あれはまだ、私が企業で働いていた頃のこと。営業担当者と一緒に、新しく設立された美容関連グッズの販売企業を訪問したことがあった。


美容関連グッズと言っても、彼らが扱うのはただ一つ。「プエラリア・ミリフィカ」という植物由来の日本未発売のサプリメントだった。

 

「我々は、このサプリを日本で独占販売することで、巨万の富を得るのであーる」と、30代前半とおぼしき社長は鼻息も荒かった。

 

プエラリアというのはマメ科の植物で、土の中に埋まっている里芋みたいな形の根っこの部分に、あっと驚く効能があるという。

 

彼曰く

・これは、ミャンマーの山岳部にしか自生していない希少な植物である。

・これを摂取すれば、女性の胸が大きくなる。

・ゆえに、現地の母親は娘にこれを食べさせている。

・自生している地域は紛争地帯なので、政府軍のサポートがなければ入手は不可能。

・だからこそ、我々の独占販売である。


そう言うと、フジフィルムのポケットアルバムを数冊持ってきて、たくさんの写真を見せてくれた。

 

そこには、迷彩服を着て銃を持った軍人たちが数台のジープに乗り、日本人が乗った車を先導している様子が映っていた。

写真は何十枚もあって本物のように見えたが、その植物に軍隊が動くほどの価値があるのか、軍隊とその企業の関係がどうなっているのかは不透明であった。

 

さらに、「効果があるかどうか、モデルさんに試してもらったんですよ」と言って、胸もあらわな女性の写真まで見せられ、ドン引きである。

 

「商品は来月には出来あがってくるんだけど、すでに評判がすごくて、予約だけで売り切れると思うよ」

と、社長は言った。

 

そして、私の胸のあたりをマジマジと見つめて、親切にもこうのたまったのである。

「種子島さんのために、何袋か取っておいてあげようか?」

 

 

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えー、うっそー。うれしー。明日から人生変わるかもー

 

 なんて思うわけもなく(いや、白状するとちょっとは思った)、隣に営業が座っていたこともあり、丁重にお断り申し上げた。

 

「ご親切にありがとうございます。すばらしい商品ですが、今回は遠慮しておきます」とかなんとか。

 

会社としてもビジネスとしても不審な点はいろいろあったし、取引はしなかったと記憶している。

 

しかし、1カ月ほど後のこと。その会社から営業に電話がかかってきた。部署は違えど同じフロアにデスクがあった営業マンは、受話機をつかんだまま、数十メートル先にいた私に向かって叫んだのである。

 

「種子島さーん、このあいだの会社の社長が、例の胸が大きくなるサプリ、どうしますか?ってー」

 

おい、おい、声がデカイじゃないか。

「あっ、いらないって伝えて」

なるべく無関心をよそおって返事をする。

 

と、受話機に向かって話していた営業マンが、再び大声で叫ぶ。

「本当にいいんですか?って。胸が大きくなるサプリ、完売しちゃうよって!」

 

ええぃ、黙れ! 黙れ! ざっと数えても60人くらいの同僚が、"ファイナル・アンサー"に聞き耳を立てているじゃあないか。

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「うん。けっこうですって伝えて」・・・って言うしかないよね。

 

結局のところ、サプリが手に入ることもなく、同僚に貧乳情報を流しただけで終わったのであった。

 

あれから十数年の時が流れ、知らないうちに、世の中にはたくさんのプエラリア・ミリフィカを用いた商品が出回っていた。

 

あのDHCからもサプリが!ということは、たくさん生産しているよね。

 

 

 

マッサージクリームなんかもある。希少植物だと聞いていたが、こんなに商品が作れるほど入手できるのだろうか。ミャンマーの政権交代と関係あるのか、別の調達ルートが開発されたのか。そして、あの会社の社長は巨万の富を築けたのだろうか・・・。

 

謎は多いが確かなことは、私のバストサイズが十数年前となんら変わっていないという事実である。しかし、まぁ、それでも、けっこう幸せに生きていますです。