こんばんは。おでこをかすめる秋の気配に、ちょっぴり切なさを感じる 種子島ぴーです。秋はあんまり好きじゃないなー。
さて、9月に入り、USインター、ロンバルディア、オータムクラシック、オンドレイ・ネペラ、ネーベルホルンと、ISUのチャレンジャーシリーズが立て続けに開催されました。
ネイサン・宇野・羽生・フェルナンデス・ボーヤン(国内大会?のホームビデオですが)各選手の新作がお披露目されたわけですが、私が一番驚いたのは、ネイサン・チェン選手でした。
どうしたネイサン? なぜ、こんな難しい曲を??
ネイサンと言えば、全米選手権で優勝して以来、アメリカ期待の星であり、「平昌オリンピックで最もメダルが期待できる選手の一人」として、米国民全員から(言い過ぎ?)期待されています。
「どうすれば金メダルが獲れるか」ってことを、第一に考えそうじゃないですか。
と・こ・ろ・が、彼がSPで選んだ曲は、Benjamin Clementiceの「Nemesis」。聞いた瞬間、見た瞬間、「うぉー、難しそう」と誰もが思うであろう曲なんです。
なにしろ、Benjamin Clementiceが演奏する「Nemesis」は、テンポの速い三拍子。音に乗るのが難しそうなうえに、ピアノの鍵盤をたたく音が耳に残るけれど、単調にも聞こえてしまう曲。
加えて、振付はシェイ=リーン・ボーンです。選手が動きやすいコリオを考えるというよりも、プロ好み、技巧的、挑戦的なコリオの印象があるのですが、みなさんはどうですか? 見ているほうは、新鮮で楽しいんですけどね。
で、ネイサンはと言えば、初戦からこの難しい曲に4回転を入れながらグイグイ挑んでいるんです。
「Nemesis」を直訳すると「天罰」。
「天罰」ですよ!! 「誰も寝てはならぬ」(トゥーランドット)どころの騒ぎじゃありません(笑)。曲の解釈とか、どうなるんだろう??
五輪の年にこれをやるネイサン・チェン、最高にクールだ!!
ネイサンの新プロ「Nemesis」はこちら
Nathan Chen US Int'l Figure Skating Classic 2017
どうですか、コリオも身のこなしも、知的&素敵じゃありませんか?
2度、3度見ると、ますますかっこよくなっていきますよ。バレエ音楽やサウンドトラックのイメージが強かったネイサンですが、完全に殻を破った感じで、最終形が楽しみです。
さて、ネイサンの初戦USインターについての記事を、おなじみicenetwork のフィリップ・ハーシュ記者が書いているので、音楽の部分だけ訳してみました。
Chen chooses non-traditional music.
ネイサン・チェンは、伝統的でない曲を選んだ。
昨シーズン、ネイサン・チェンは、4回転ジャンプの歴史を塗り替えただけでなく、挑戦するリスクを受け入れたことで脚光を浴びた。
オリンピックシーズンの初戦であるUSインターナショナルで、彼は、ほとんどのスケーターたちが、「トゥーランドット」や「カルメン」「オペラ座の怪人」など、嫌になるほど使い古された曲で安全に演技をしている中、危険を冒した選曲をして目を引いた。(おやおや~? )
チェンは、振付師シェイ=リーン・ボーン(SPをBenjamin Clementineバージョンの"Nemesis")とローリー・ニコル(映画『小さな村の小さなダンサー』から、ストラヴィンスキーの『The Rite of Spring』の力強い楽節を使ってフリープログラムを創り上げた)に曲を選んでもらった。
「どちらのプログラムも気に入ったよ」と、コーチであるラファエル・アルトゥニアンは言う。
「どちらのプログラムの曲にも、特にストラヴィンスキーの曲は、無骨で荒々しく、シンコペーションのある部分が含まれています。フィギュアスケートの動きは主に、スタッカート(切音)やアクセントよりも、流れるようにカーブを描き、上品です。つまり、18歳のネイサンがコリオ的に曲を解釈するには、今シーズンはより時間を必要とするだろうと分かったうえでの挑戦です」
「僕のゴールは、フリープログラムを一つの作品として仕上げることであり、技術的に自分がどこまで到達したかという頂点を築くことです」と、ネイサンは話す。