こんにちは。種子島ぴーです。
羽生選手がNHK杯の練習で怪我をしたという報道で気になったことがありました。「負傷した日は病院には行かず、ホテルで右足首を冷やし、回復を待った」という内容。チームドクターがいるのか、いつもの整体師さんに従ったのかわからないが、これほどの選手なのだから、すぐに病院に向かうという選択肢はなかったのだろうか。
報道が100パーセント正確とも言えないし、公表していないこともあると思うので、単なる憶測での感想ですが。
この報道で、以前、私がホノルルマラソンに参加して、膝蓋腱(ヒザまわりの腱)を傷めたときのことを思い出した。
スタート前からヒザに違和感はあったものの、走らずに帰るわけにもいかないので、出走。走り始めて10キロほどで、早くも激痛がし始めた。
やがて、痛すぎて歩くことも止まることも体重をかけることもできなくなり、かといって棄権もできないので、ヒザから下を振り子時計のように動かして42.195キロを完走した。
が、ゴールはしたものの、ホテルまで歩いて帰ることも不可能な状態だった。
しかし、ラッキーなことに私は、レース後のマッサージを予約していたのである。「10分10ドル」とか、そういう設定だったと思う。
医療ブースみたいなところに行くと、西洋人チームと日本の専門学校学生チームが、施術を担当しているようだった。私が降り分けられたのは、西洋人チーム。
ベッドに横たわり、「ヒザに激痛があって歩けないので、何とかしてほしい」と訴える私に、男性スタッフは重々しくうなづいた。
そして、私のヒザを立てると、両手をかざした。そのまま、無言で微動だにしない。
「まじか?」 まさか、まさか、手のひらから「気」を送って治そうというのか??
3分ほど、まったく動かない。やがて、彼は聞いた。
「Better? (良くなったか?)」
いや、いや、いや、いや、いや・・・
「NOooooo!!! 私はヒザが、いったーいでーす。なんとか、してくらっさーい!!!」
彼はさらに重々しくうなづいて、今度はヒザに直接、手を合て、「はーっ」と気を入れた。そして、私に目配せしながら聞いた。
「Better? (良くなったか?)」
いや、いや、いや、いや、いや・・・
このヒザは物理的に問題があるのであって、「は~」じゃ治らないと思うよ。
日本人チームのほうを見ると、マッサージや整体、怪我の治療など、きびきびと動くスタッフと、気持ちよさそうに癒されているランナーたちが見えた。
私は、勇気を出して言ってみた。
「ヒザが、ものすごくものすごくものすごく痛いんです。あっち(日本人チーム)のようなことをしてほしいです」
彼は静かにうなづくと、私のヒザを軽くモミモミした。小さい子供が弱弱しくおばあちゃんの肩をもむ、あんな感じの雑なモミモミである。
そして、聞いた。「Good? これならいいだろ?」
「NOooooo Goood!!!」 今や、痛みに加えて怒りが襲ってきた。
「ヒザが、いったーいでーす。なんとか、してくらっさーい!!!」。再び訴えると、彼は興味なさそうに言った。
「テン ミニッツ!! (10分たったから、終了だ)」
「はー? なんの効果もないけど」
「テン ミニッツ!! 」
「これじゃあ、痛くて歩けないよ」
「テン ミニッツ!! 」
「ほんとにプロなの?」
「テン ミニッツ!! 」
・・・ということで、私は冷たくテンミニッツ男に追い出された。
しかし、ヒザの痛みで歩けない。受付で、「今、ヒーリングみたいなのを受けたんですけど、マッサージでもなんでもなくて、とにかく、このままではヒザが痛くて歩くことができないんです」と訴えると、受付のスタッフは、ヒーリングチームの評判を知っていたのか、「あ~」と笑って、日本人チームに再度まわしてくれた。
日本人チームのメンバーは、毎年、ボランティアでホノルルマラソンに参加しているという整体・医療専門学校の学生さんたちだった。
ヒザの状況を説明していると、同行していた学長だか院長だかが、飛んできてくださった。そして、簡易患部冷却装置みたいなのを運んできて、私のヒザを急速冷却。その後、テーピングをほどこし、包帯でグルグル巻きにし、ギブズみたいなものを装着されて終了した。
テンミニッツ(10分)はとうに過ぎていたし、治療費も受け取ってくれなかった。(うぅ、ありがとうございます)
その時、帰国したら必ず病院に行くこと、もしかすると足を引きずる後遺症が残るかもしれないことを説明され、気合だけで完走してしまった自分の愚かさを思い知ったのである。
幸い、ヒザは完治し、後遺症が残ることもなかった。
が、あの時、専門学校の方々に出会わず、西洋人に「気」を送られた後、ホテルで足を冷やしただけで終わっていたら、今頃どうなっていただろうか・・・
怪我をした後の初動は大事だと、つくづく思うのである。