オオナゾコナゾ

種子島ぴー/九州出身、東京在住。夫と二人暮らしです。旅行のこと、フィギュアスケートのこと、香港のことを中心に、右から左へ流せなかった大小の謎やアレコレを、毒も吐きながらつづります。

「高橋大輔は復帰戦で、チャンピオンの真髄を見せた」。ジャパンタイムズ翻訳と私の感想。

こんばんは。高橋大輔選手の復帰戦を見てから数日が経ち、ようやく文字にできそうな種子島ぴーです。

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最初にSPを見たときは、感動とか涙とか、一切なかったです(笑)。

「音楽が流れた瞬間、ファンはブワッと涙を流すはずよ❤」というD.ウィルソン姐さんの思惑は、大はずれ。(たぶん、全日本選手権では泣いちゃうかも)

ただただ、緊張で気持ち悪かったのと、息を吸い込んで止めた状態で見ていました。

「The Sheltering Sky」が流れて大ちゃんがゆっくりと動き出すと、彼の周りの空気がジワジワと動き出すのを感じました。

「こんな風に空気を押しながら氷の上を移動できる人って、なかなかいない」ということに、改めて気づく。

スピンの回転やスピードこそ戻っていないものの、トリプルアクセルも3F+3Tのコンビネーションもラストのルッツも決めて、全体的には「あの日の高橋大輔」に近いものだったように感じました。

にも関わらず、私が魅了されたのは、ジャンプがボロボロだったフリーの「Pale Green Ghosts」のほう。

ラフマニノフの「鐘」をアレンジしたパートからスタートしたときは、「なぜこんな重苦しい曲を? 演技を後押ししてくれる曲ではないのに」と思ったけれど、

ジョン・グラントのオリジナル部分に入ると、コリオのカッコ良さとジャンプへの入りやステップの難しさ、独創性に、目が釘付け。

ジャンプで転倒し両足着氷になればなるほど、プログラムの意図みたいなものが見えてくるから不思議です。

音の間の取り方、ベースに合わせて滑りながら細かくリズムを刻んでいる感じも、他の選手には真似できない部分。2度、3度と繰り返し見ると、さらにいい。

明らかにスタミナ不足で脚にきているようでしたが、「この人は4年前に戻りたいのではなく、先に進みたいんだな」と、確信しました。

一度頂点を極めた人だから、1試合ごとの伸び代は大きいと思う。普通の選手の3倍くらいの早さで仕上げてきそう。

初戦よりも第2戦が、俄然、興味深くなってきました。

西日本まで1カ月しかない。全日本まで2カ月しかない。うーん、体力って1、2カ月で付くものなのかな? でも、「時間が足りないので、来シーズンからにします」と逃げないところが、潔い。本当に今、滑りたいということなのでしょう。

「復帰を決断して良かったなって。辛いことすら楽しんでいる」という、昨日の高橋選手の言葉を聞いて、こちらまで幸せになりました。

 

さて、数日前の記事ですが、ジャパンタイムズの記事から高橋大輔部分を引用して訳しておきたいと思います。

私が独自に訳したもので、内容について記者は一切の責任を負っておりません。

 

高橋大輔は競技復帰戦で、チャンピオンの真髄を見せた。

www.japantimes.co.jp

 

ジャンプはもう少し高く、スピンはもう少し速くする必要があるが、祝日の週末に行われた2010年以来4年ぶりの高橋大輔の復帰戦は、成功とみなされるだろう。

兵庫県で月曜に開催された近畿フィギュア選手権で、高橋は195.82で3位になった。それにより、来月名古屋で開かれる西日本選手権への進出を決めた。その次のステップは、彼の目標である12月に大阪で開かれる全日本選手権である。

友野一希も総合点206.80で、選考大会で優勝した。(西日本選手権は免除なので全日本へ)

高橋には、やるべきことが確かにある。初回の失敗により、この先に待ち受けているものが見えてきたのだ。さらなる練習とハードワーク・・・。

高橋は、フリーの「Pale Green Ghosts」を、すばらしい3Fと3Tのコンビネーションジャンプでスタートした。しかし、その後、2本のトリプルアクセルで転倒し、いくつかの3回転ジャンプ(サルコウ、フリップ)を試みたが、両足着氷になってしまった。加えて、3回転ルッツとループはダウングレードされた。

5回も全日本チャンピオンに輝いた彼は、試合後のテレビインタビューで、自分の演技をこう評価してみせた。

「ショートと比較して、フリーでは足が軽かったのですが、緊張してうまく演技ができず、たくさんミスをしてしまいました。でも、今日の演技から学ぶことがたくさんあったので、それを次の大会に活かしたいです」。

「フリーでの失敗は、予期せぬものだった」と、彼は言う。

「練習ではこれほど多くのミスはしなかったので、驚きました。特に、後半は、もう少しうまくまとめられるはずでした。人生で最悪の出来のフリーだったと思います。観客の皆さんの前で、こんな演技を見せることになって申し訳ないです。ここが底なので、ここから良くなっていくので、みなさんがそれをまた見に来てもらえたらと思います」

ショートの後、77.28で大会トップに立った高橋は、(フリーの行われた)月曜日に氷の上に降り立ったとき、混乱したことを認めた。

「最初の部分で、間違ったコリオをやっちゃいました。ミスをしたら、笑えてきました」と、高橋。

「疲れました。いつもは、もっとうまく出来ていたのですが。次は、もっといい演技をするよう頑張ります」

日曜日のSP「The Sheltering Sky」のほうが、シャープに見えた。しかし、フリーでは、スタミナに課題があることが明らかだった。

伝説の男は、できるだけ早く時間を巻き戻そうとしている。
「4年前に活躍していた頃の状態には、全然、程遠いと感じています。今回の大会で、痛感しました。できるだけ早く、4年前の状態に戻したいです。この近畿選手権で、思いが強くなったというか、決意を新たにしました」

競技から4年間離れていて、“底”の状態にあっても、高橋は昨年の世界選手権5位の友野が優勝した大会で、表彰台に乗った。テクニカル・エレメンツは明らかに4年前には劣っているが、プログラム・コンポーネンツは、尚、卓越したものだ。

本誌が言いたいのは、どんな職業であれ、真の偉大さというものが常にあるということだ。時にそれは、しばらく棚上げして元気を取り戻し、表面に戻す必要がある。

もっとも注目に値することは、このチャンピオンが、復帰するという約束を果たしたという点だ。再び競技の世界に自分をさらすリスクを負うことで、高橋は批判にさらされた。

しかし、約束通り復帰してみせたことで、高橋は、彼をそもそも偉大なスケーターにした勇気とガッツを、まだ持っていることを示して見せたのである。