こんにちは。種子島ぴーです。
連休中のGoToトラベルは、いかがだったでしょうか。
さて、今日は珍しくまじめなお話です。
1週間ほど前に、フィギュアスケートの元中国ナショナルチームの選手・于書然(ジェシカ・シュ・ラン・ユー)が、
中国スケート界に根付く体罰文化、虐待文化を告発しました。
主な内容は、肉体的、精神的な暴力です。
于書然(ジェシカ・シュ・ラン・ユー)選手の立ち位置を確認しておくと、
中国生まれで中国選手でしたが、父親がシンガポール出身のため、
途中からシンガポール代表に変更しました。
上記は、于書然のインスタに投稿された写真。真ん中が彼女。
左が李子君、右がハン・ヤンです。
2015年のジュニア世界選手権では、すでにシンガポール代表でした。
アジアフィギュア杯、四大陸選手権などに出場し、シンガポール初のシニア世界選手権出場を果たしています。
告発によれば、虐待は11歳頃からスタートし、
- ミスをすると、スケートのプラスチックのエッジカバーで、手や足をぶたれた。それは鞭で打たれるような音がする。練習がうまくできなかったときは、連続で10回以上ぶたれ、皮膚に生々しいあとが残った。
- 14歳で体重が増えてジャンプが跳べなくなると、「ばか」「アホ」「のろま」「役立たず」「デブ」と罵倒され、スケート靴の先でスネを蹴られ、血が出て跡が残ったこともある。
- 暴力や罵倒は、衆人の前で行われるため、精神的なダメージを受けた。
中国でトレーニングしていたときの彼女のコーチは、元男子シングルスケーターですね。
彼女は、コーチを告発しているのではなく、それが当たり前のように行われている中国フィギュアスケート界全体を告発しています。
ここまで読んで、驚かなかった人も多いと思います。
ニュースを取り上げた7月21日付の英ガーディアン新聞には、
この一文も含まれていました。
人権NGO団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、今週、日本の若いアスリートに対する“横行する”虐待についても詳細にレポートしています。
私自身の話をすると、中学、高校と部活動であるスポーツをしていました。
強豪校だったので、スポーツ推薦で高校に進学した仲間がいました。
私は、普通高校に進んで競技を続け、競技会でかつての仲間と再会したのです。
その時の彼女は、暗くうつろな表情で、足を引きずっていました。
膝は、サポーターと包帯でグルグルに巻かれ、コーチが絶えず怒鳴っていました。
膝のケガは、コーチに思いっきり蹴られて、お皿が割れてしまったとのこと。
後遺症が残っていると思います。
書いているだけで、苦しくなってきてしまいました。
当時は、「あんな目にあってまで、スポーツを続ける意味があるのだろうか」と思いましたが、彼女はあの環境から逃げることができなかったのだと思います。
同じような経験をしている人は、日本に星の数ほどいるはずです。
話を戻すと、中国の選手が中国スケート界を告発したら大変なことになると思いますが、
シュ・ラン・ユー選手は、シンガポール籍になり、告発しやすい立場になったとのこと。
また、「動画配信サービスNetflixの『アスリートA』(あるアスリートの告発)を見て、声をあげる勇気をもらった 」と書かれていたので、
Netflixで『アスリートA』(あるアスリートの告発)を見てみました。
有名な事件のドキュメンタリーなので、ネタバレは意識せずに書かせていただきます。
『アスリートA』は、米国体操協会のチームドクターであったラリー・ナサールが、
20年以上にわたって女子選手に性的暴行・性的虐待を働いていた事件のドキュメンタリーです。
性的虐待を証言をしたのは、実に500人以上!!
金メダリスト、銀メダリスト、銅メダリストを含むオリンピック出場選手も9人います。裁判では160人が証言しました。
なぜこんなに大勢の少女たちが、被害にあったのか??
犯罪の舞台の多くが、ナショナルチームのコーチが所有するスポーツセンターの中で起こったからです。
コーチは、独裁政権時代のルーマニアから亡命した夫婦で、米国体操界の黄金時代を築きます。
コーチが過度で厳しい指導をし、ダメージを受けた体に整体やテーピングをほどこしながら、性的虐待をしていのたが、チームドクターでした。
選手の両親は、施設の中に入ることができず、帯同禁止の大会もありました。
なんと、オリンピック期間中にオリンピック村でも、ラリー・ナサールは性的虐待を行っていました。
少女たちの中には、治療なのか性的虐待なのか、わからない選手も多かったようです。
しかし、マギー・ニコルズという全米2位の選手が、
「医師の行為は不適切ではないか」と、連盟に報告します。
すると米国体操連盟は、事実を隠蔽し、握りつぶします。
びっくりなことに、マギーは、成績は全米で2位だったにもかかわらず、
オリンピック代表からはずされ、補欠にも選ばれませんでした。
連盟が事実を隠蔽したことで、その後もラリー・ナサールの犯罪は続き、虐待された選手は増え続けていったのです。
ドキュメンタリーの最後は、見応えがあるので、興味がある方は、ぜひご覧ください。
最近、米国では、性的虐待や暴行の被害に対して声をあげる人を、「被害者」と呼ばずに「サバイバー」と呼ぶようです。
傷つけられても立ち上がり、悪人を告発し、自ら未来を切り開いていくイメージがあって、とてもいい呼び方だと思います。
シュ・ラン・ユー選手の話や『アスリートA』を見ると、
ゴタゴタしたまま引退となってしまった李子君(ジジュン・リー)や、世界選手権に呼ばれなかったハン・ヤンのことが浮かびました。
キスアンドクライで選手が笑顔でも、コーチが喜んでいても、実際のところはわからなくなってきてしまいました。
シュ・ラン・ユー選手は、告発の中で、2022年の北京オリンピックを前に、IOCにスケーターの保護を強化するよう求めています。
オリンピック前は、国家の成績のために、スポーツ全体で、選手への暴力、体罰がエスカレートする傾向がある気がします。
また、華やかなイメージのあるスポーツや、スポンサーが付くスポーツは、選手の訴えを握りつぶす傾向があるかもしれません。
統計を取ったわけではありませんが、『アスリートA』を見て思いました。
日本のフィギュアスケート界は、大丈夫なのでしょうか。
私に何ができるか、正直わかりません。
でも、もしも、声をあげる選手がいたら、その声を疑わず、かき消さず、私は耳を傾けます。
「虐待によって、スケートが嫌いになってしまった時期がありました。練習に行くのを怖がり、途中で自動車事故にあって行けなくなるのを願い、練習中ずっと泣いていました。でも私が憎んだのはスケートではなく、スケートの持つ残虐性だったのだと、今はわかります。若いアスリートたちは、私のように虐待を経験しなくても、スポーツを愛することができるはずです」(シュ・ラン・ユー選手)
織田君は、元気かな…