こんばんは。寒さが苦手な種子島ぴーです。ストーブの灯油の減りが早すぎます。
さて、全日本選手権は、もうすぐそこ!!
にもかかわらず、ニック・ベルレオスさんのNHK杯女子のファッションチェックを訳していなかったので、
あわてて意訳・超訳しておきましょう。
気づかなかった発見があって、全日本を見る時の参考になるかもしれません。
↓記事リンクはこちらです
花のプリンセス本田真凛
日本の本田真凜のショートプログラムは、マイケルスミスの『 The Giving 』。
彼女は、雄大でとても美しい旋律の曲を、このゴージャスなコスチュームを着て演じたのよね。
デザインの特徴は、裾がヘム(ギザギザ)になったパープルのベースに、何層かの生地を重ねてあるところよ。
トップスは、手の込んだスパンコールや刺繍細工が、上半身を縁取るようにほどこされているの。ヌードイリュージョン(素肌のように見せたベージュの薄布)と袖の部分に、とても美しく配置されているわね。
彼女は、リッチだけど繊細な妖精か、ラブリーなヘアバンドと相まって、花のプリンセスみたいに見えるわ。
9.90をあげちゃう!!
真凛のフリースケートは、ジャスティン・ハーウィッツの『ラ・ラ・ランド』 。
またまた首周りが、お高そうな花やスパンコール、刺繍で埋め尽くされた、ゴージャスなブルーの衣装よ。
衣装の上の部分を強調するように、胸の部分に美しいドレープが寄せられているの。
鮮やかな色合いのブルーを選んだことで、甘さもありつつ、すっごく目立っていたわ。
たぶんこの衣装は、映画の中で女優のエマ・ストーンが、女友達と出かけるときに着ていたブルーのホルタードレス(首からつるすタイプのドレス)にインスパイアされたものじゃないかしら。
採点は、9.50よ。
美しい妖精三原舞依
三原舞依のショートは、映画『Romance on the High Seas』から、『It’s Magic』。
歌っているのは、往年の大女優にして大歌手ドリス・デイよ。
舞依はこの曲を、クリスタルやスパンコールが散りばめられた、フクーシャピンク色の衣装をまとって滑ったの。
白いリンクで、フクーシャピンク色は、鮮烈な印象を残したし、クリスタルの装飾も良かったと思う。
ただ、あたしとしては、“1940年代のドリス・デイ”のテイストが、もう少しあったらよかったなぁ…って。
たぶん、映画で着ている衣装に近いのかもしれないけど、今風にしてあるのよね。
この衣装は、『くるみ割り人形』のライラックの精を演じるには、どんぴしゃりだったと思うわ。うーん、8.00。
三原舞依のフリーは、豊田裕子演奏の『Fairy of the Forest』『Galaxy』。
あたしは、彼女が着たこの衣装、だーい好きなの。まったくもって、完璧だわ!!
舞依は、ビューティフルな妖精みたいに見えたわ。当然よね。
衣装の主役は、複雑な刺繍やスパンコールや、グリーン、シルバー、ブラック、ピンク、すみれ色など、さまざまな色合いの刺繍飾りよ。
背中の上の、蝶々の羽のようなモチーフも、すっごく素敵。
さらに、さらに、彼女のアイメイクは、ファンタスティック!!! 9.50点!!
レッドカーペットも歩ける山下真瑚
山下真瑚のショートは、ロッシーニの『セビリアの理髪師』より『今の歌声は誰?』。
真瑚は、カラフルな衣装で演じたわけだけど、デザインや色、うずまきみたいなアップリケの感じが、“中世の宮廷の道化師”を連想しちゃったんだけど…。
この衣装が、あの有名なオペラや演じているキャラクターと、どういう関係があるのかしら?
たぶん、理髪師のフィガロかコメディアンのアルレッキーノ、召使いの役かしら? あたしは、ちょーっと、ベネチア風の印象を受けたわ。辛口だけど7.85
真瑚のフリーは、『A Thousand Years 』。映画『トワイライト・サーガ /ブレイキング・ドーン Part1』のサントラ曲ね。
彼女は、紺色の衣装を着て演じたのよ。素敵でしょ。
特徴は、ギャザーを寄せたウエスト部分の、すーーっごく複雑なゴールドのスパンコール細工。それから、袖とトップス上部のヌードイルージョンね。
美しいわよねー。レッドカーペットの上だって歩けるし、豪華な結婚式で着てもいいわよね。まぁ、映画『トワイライト』は連想しないけど、それでもエレガントで綺麗よ。9.00
モダンでロックな樋口新葉
樋口新葉は、ショート『Bird Set Free』by Siaで、アシンメトリーなラインがポイントの、インディゴブルーの衣装を着たわ。
ヌードイリュージョンのベースに、クリスタルの「氷柱」のようなスパンコール細工が、全体にほどこされているの。
ワンスリーブ(片袖)のデザインは、ブロンディやパット・ベネターといったロッカー系のパフォーマーが着ていた衣装の雰囲気があって、強さを感じさせるわ。パンクではないものの、モダンで明確な方向性を持った衣装だと思うわ。9.00
新葉のフリーは、『ポエタ』。
フラメンコにインスパイアされた曲よね。ってことで、必然的に新葉の衣装は、スペインのセニョリータ、カルメン風になったわけだけど…。
要素が、てんこ盛りなのよね。赤、黒、レース、赤いバラ、セビリア風のティアードフリル…
足りないのは、マンティラ(女性が教会で頭と肩を覆うレース)とシニヨンにまとめた髪の上のペイネタ(大きなヘアコーム)くらいだわ。
音楽やテーマに対しては、「あー、そうそう、そうでしょうよ」って感じでくどいけど、デザイン上の素敵な要素もあるわよ。
ネックラインが左右非対称になっていたり、フロントの中央にヌードイリュージョンでアクセントが付けられているのは、面白いわ。8.75
J.Pゴルチエテイストの坂本花織
坂本花織のショートは、『バッハ・ア・ラ・ジャズ』。
この衣装、いいじゃない!!
デザインのポイントは、ピンク、ライラック、ディープパープルの、オンブル染めの素敵な色合い。
そして、ウエストの高い位置のギャザーとすばらしい細工、ゴージャスな大小のクリスタルを配置した手仕事ね。
首回りにほどこされたスパンコールの装飾は、ひときわ美しかったわ。ドレスに散りばめられたスパンコールも、 “星が輝く夜”を連想させて、素敵だわ。9.00
ショートの衣装も良かったけど、坂本は“ベストコスチューム”を、フリーに温存していたようね。フリーは『マトリックス』よ。
このモダンでシックで超ファッショナブルなデザイン、ほれぼれするわ。
フェイクレザーとシースルーのシフォン生地が、縦にはぎ合わせて使われているなんて!
ピエール・カルダンやジャン・ポール・ゴルチエみたいじゃないこと?!
だけど、衣装のハイライトは、そこじゃないのよ。グリーン、ターコイズ、ゴールド、ブルーのバリエーションで、映画『マトリックス』を表現したヒカリモノよ。
衣装のサイドと手の絶妙な位置に、付けられているの。
最後の仕上げは、「私を甘く見ないで!」って感じのシニヨンのヘアスタイル。パーフェクトよ!! 9.95
以上、ニックさんのチェックを、ざっくり訳してみました。
プロなので、すごく細部まで見ていて、参考になります。
私のように、「素敵」「好きじゃない」レベルで見ている人よりも、細部の手仕事やファブリックの重ね方まで見てくれている人がいると、
デザイナーも衣装の作り甲斐があるのではないでしょうか。
全日本選手権では、選手の動きと衣装の動きがリンクする様子や、
衣装が選手に与えるパワーについても、考察してみたいと思います。なんてね…