こんにちは。東京はお天気がよかったですが、自宅にこもってスケートを見ていた種子島ぴーです。
全米選手権開催中ですが、カナダでバーチャル試合 (スケートカナダ・チャレンジ) も行われています。
中止になったカナダ選手権の最初の日程に合わせて開かれていて、
解説をバートンさんがしているという豪華さです。
こちらは無料で見られます。
https://skatecanada.ca/events/2021-skate-canada-challenge/
「変化」が印象的だった 全米女子
さて、全米選手権女子ですが、事前情報や先入観がほぼなく見たところ、見応えがありました。
特に、印象に残ったのは、選手のプラス、マイナス両方の「変化」です。
新鮮だったり、練習環境が推察されたり、元気をもらったり、いろいろですね。
点数に関係なく、演技としての感想を書いていきたいと思います。
いやもう驚きのアリサ・リュウ
まず、誰もが驚いたのが、アリサ・リュウ選手だと思います。
SPは、『道 ラ・エストラーダ』。
身長が一年で8センチ伸びて、顔つきもすっかりレディになっており…しかし、年齢は15歳。15歳にふさわしいサーカスっぽい衣装とメイクではあるが、見た目はレディなので、とまどったというか、プログラムが合ってない気がしました。
振付は、マッシモ・スカリ。ちょっと、手先をピロンとそらせるところとか、
大ちゃん要素が垣間見えました。あまり表現できていなかったような。
解説の方々には好評だったので、私だけの感想かも。
昨シーズンまでのコケティッシュな彼女だったら、マッチしてたかな。
キスアンドクライでは、キュートな15歳の姿だったので、内面的にはこのプロはあっているのでしょう。
SP後のNBCスポーツインタビュー
リュウは、この一年で3インチ(約8センチ)身長が伸びて、いくつかの怪我と戦い、トレーニングを短縮しなければならなかった。最高難度のジャンプをやめて、4回転とトリプルアクセルの代わりに、ステップとスピンに重点を置き、顔の表現と芸術性に取り組んだ。
「自分自身にとても満足しています。私自身がやりたかったプログラムですし、この数週間練習してきたもので、きょうの出来にかなり満足しています」
フリーでは、このインタビューの通り、顔の表情の演技がうまくなっていました。
SPは、ジャンプの着氷がとてもきれいだったのですが、
フリーでは、回転不足気味のジャンプを、転倒せずに決めていくスタイル(?)は健全。
見事に滑り切った!!と思いましたが、ナショナル選手権にもかかわらず(笑)、ジャンプの回転不足はきっちり取られていました。
その前に滑ったアンバー・グレンよりも低い点数に、笑顔が消えてしまいました。
本人としては、150点近く出るイメージだったのかな。
3Aや4回転を封印したぶん、ステップや顔の表情を楽しめました。身長がこれだけ伸びたのに、ジャンプを調整してきていて、さすがです。
意外な結果のスター・アンドリュース
アリサ・リュウ選手と同じように、変化と格闘していたのがスター・アンドリュース選手。
いつも二番手グループに必ず入る選手だったのですが、
コロナ禍で練習ができなかったのか、年齢的に体型変化の時期なのか、
スケーティングも見た目も別人のようになっていました。
映像が遅回しなのではないかと思うほどスピードがゆっくりで、ジャンプもステップもキレがなく、SPを終えてまさかの最下位。
信じられません!!
精神面を心配しましたが、棄権せずにフリーに出場。
やはり、ジャンプに苦戦していましたが、一晩で気合を入れ直したかのよう。
前日よりスピードもアップして、意地とナイスファイトを見せました。
フリーを終えて、17位→12位に順位を上げました。
練習環境が整ったら、またトップを脅かす存在になってくると期待しています。
心は折れないグレイシー・ゴールド
私が勝手にミラクルを期待していたグレイシー・ゴールド選手。
本当は、こういうケースでは過度に期待してはいけないのですが…
オンラインチャリティイベント「Blades for the brave」の司会があまりにすばらしく、ほっそりして生き生きして見えたので‥
あまり練習できなかったのかな。スピードと元気がなかったです。
SP後のキスアンドクライで、自分の爪をじっと見ている様子に、心配になりました。
でも、フリーにも出場。
最初のジャンプを跳びに行くときのキリッとした表情に、「大丈夫だ!」と思いました。総合で13位。
試合後、「来年も必ず出場する」と断言したそうです。滑ることで、彼女はたくさんの人にメッセージを送っています。
演技を楽しめたのはマライア・ベル
私が、一番演技を楽しんだのは、マライアです。
彼女は、リッポンについてから、背中の使い方がとてもきれいになりました。
背中に表情があるので、演技に空間が生まれて、見ていてうっとりします。
SPでは、得意のトリプルルッツが回転不足になってしまいました。ステップでも、一瞬バランスを崩しましたが、
「少し興奮したり心配もあったのは、プログラムを演じているときにエキサイティングしていただけです」
NBCスポーツ
フリーの『アバメドレー』も、「動きが美しいなぁ」「リッポンにどんどん似てくるなぁ」と思って見ていましたが、
途中からジャンプがかみ合わなくなっていってしまいました。
それと共に、コリオも“間”なのか休憩なのかわからない感じに…
リッポンが来てなかったから? いたのかな? ラファ親父はいたようだが…
フリーは、暫定トップのテネルに20点近く足りなくて、
優勝の可能性が消えてしまいました。
前とは違うアンバー・グレン
今大会で、いちばん「おっ!」という変化を感じたのは、アンバー・グレンでした。
これまでは、元気で勢いよく演技をするけれど、少々雑な印象がありました。
ところが、いきなり演技がスマートで洗練されている!!
SPはトリプルアクセルを跳んで、ためらいなく離氷したので、いった!!と思いました。が、着氷が惜しかった。でも、アクセルに関係なく、よどみない演技に引き付けられました。
フリーは、ミーシャG振付の『レイン・イン・ユア・ブラック・アイズ』。
内側からにじみ出る強さに、圧倒されました。
正直に言うと、初めて彼女の演技に引き付けられました。
これで、秋にリンク外の事故で顔を骨折していたとか?!
どうすれば、こんなに強く明るくいられるのか。
自分の点数の高さに驚きすぎるアンバーの様子は、
今年のキスクラ大賞候補です。
オーマイゴット状態。
「私は、あらゆる期待とプレッシャーから自分を解き放ち、滑ることに集中しました」。NBCスポーツより
達観した感のあるブレイディ・テネル
優勝したのは、ブレイディ・テネルです。
コーチや練習環境を変えたにも関わらず、落ち着きすぎるくらい落ち着いていて、
ジャンプを着氷するたびに、「どうですか、みなさん?」といった感じで周囲に視線を送る余裕がありました。
彼女は、全米で優勝した後、ジュニアの新星アリサ・リュウにスターの座を持っていかれてしまいました。
そのまま沈んでいくかと思われましたが、見事にステージを上げてきました。
テネルは、二年続けて二度目の金メダルを狙うことについて、「それにこだわると、プレッシャーで押しつぶされそうになる。だから、私はそれを心の奥に隠しておくことにした。失くしてはいないが、看板のように掲げるのではなく、引き出しの中にしまっておくようなもの」
NBCスポーツ
SPもフリーもブノワ・リショーさんの振付です。
暴言を吐かせていただきますと、リショーさんは、手の表現に乏しい人のプロを素晴らしく見せる手腕があると思っています。
テネルは、普通のプロを滑ると魅力的に見えません。
SPの『モデレーション』は、はまっていると思います。
が、フリー『サラエボ』は、私は、プログラム自体には何も感じませんでした。
『サラエボ』というからには、人間の絶望や怒り、希望といったものが盛り込まれていると思うのですが…。
解説者は絶賛していたので、私だけの感想だと思います。
前に滑ったSP2位のアリサ・リュウの得点が伸びず‥という、グッドな滑走順で、きっちり、かっちり、気迫に満ちた演技をやり切りました。
優勝タイトルを奪還することは、私にとってすべてでした。コロラドに拠点を移した背景の原動力の一つでした。毎日、目覚めてからの原動力でもありました。「結果ではなく過程が大切」と言われますが、結果を得ることもかなり気持ちがいいです。
NBCスポーツより
再び全米女王に返り咲くために、並々ならぬ思いがあったようで、
目標を達成できて素晴らしいですね。
好調なカレン・チェン
総合3位になったカレン・チェンも、よかったです。
休養したり復帰したり、しばらく表彰台から遠ざかっていた印象でしたが、
活力あふれる演技で、練習も好調そう。
昨シーズンは、ジャンプの回転不足を取られてばかりいましたが、
今回は、ほとんどノープロブレム!! 2Aの幅もすごかった。
SPのスパイラルでガッツポーズをしたのが新鮮でした。
スパイラルしながら、ガッツポーズ?!
というわけで、優勝はテネル、2位はアンバー・グレン、3位はカレン・チェン、4位はアリサ・リュウ。
納得感のある順位でした。
世界選手権は、誰が行くのかな?
オリンピックシーズンに向けて、3Aを装備したアンバー・グレンが追い上げてくるかも。クレバーなカレン・チェンも、完全復活してくるかも。
米国女子のトップ争いも、面白くなってきました。
私のゆるい感想はこんな感じでした。みなさんの感想はどうでしたか?