うまく言えないけれど、感動しています。
坂本花織選手の演技を見終わって、
感情がゴーッと押し寄せています。
ギリシャのパルテノン神殿で、
神事か祭事を見せられているようでした。
「女子フィギュアは、もう見たくない」。
「女子フィギュアは汚されてしまった」。
と、言う人も少なくない今、
「これがフィギュアスケートです」。
「これが滑る楽しさです。美しさです」。
と、再確認させてくれたような、
かおちゃんの滑り。
オリンピック精神にもう一度、
灯をともしたような演技だったと思いませんか?
小型飛行機のように宙に浮き、
ゆらゆらと大きく重心を移しながら、氷の上を移動していく。
なんてしあわせな光景なんだろう。
細々とせわしないつなぎを入れながら、
着氷のフリーレッグをキュッと上げて高得点をたたき出す
細身の少女たちの演技を、何年も見続けてきました。
「何かがおかしい」という心地の悪さが、
「ドーピング陽性」という事実によって言語化されたとき、
目の前のフィルターがはがれ落ちたようです。
フィギュアスケートに背を向けようとしていた観客を、
「!」と振り向かせた、かおちゃんの滑り。
中野コーチの胸で号泣する姿に、
私も、もらい泣きしました。
彼女は、すごいことをやってのけたんだと思う。
明後日のフリーでも、かおちゃんの滑りが見たくて、
世界中の人がフィギュアにチャンネルを合わせるでしょう。
フィギュアスケートをやっている少女たちに、
勇気と希望を与える演技だった、とも思う。
とてつもなく大きな意味を含んだ
『グラディエーター』だったと思います。