緊張した空気の中で、どこまでメロウさ、アンニュイさを出せるのか。
私が、宇野昌磨選手、今シーズンのSPで注目していたのは、そこでした。
なかなか、難しい挑戦だと思います。
ジョン・メイヤーの『Gravity』。
歌詞の意味はともかく、私の中のイメージは、
照明を落とした暗めのバー。
一日の終わりの開放感と気だるさの中に、
幸福感と生命力が漂う空間です。
しかし、それ以前に…
観戦する私の心がガチガチに緊張しており、
メロウな雰囲気を感じ取れるかどうかが問題でした😂
報道では、昌磨がジャンプに苦戦しているという話も聞こえており…。
「プリーズ・ウェルカム・ザ・ファイナル・コンペティター」
のコールと共に、最終滑走の昌磨が登場。
ひゃー、緊張~たすけて~
ニュー衣装です。
落ち着いたレッドにブラックの襟。
キラキラ、キラキラと上品に光っています。
すっかりおなじみになった、マシュー・キャロンさんの、
昌磨仕様の肩のストーンの並べ方。
予想したデザインとは違ったけれど、
ジャンプの跳びやすさを重視しているのだと思います。
演技スタート。
エレキギターの弦をはじくように、音に合わせて腕で空気をはじく昌磨。
最初の部分のコリオ、いいな。
と、今ごろ気づく。
まずは、ステファンが言うところの“猫のような歩み”で、
宵闇に忍び寄るような助走からの4回転フリップ。
おおおー。
音楽に溶け込む鮮やかな着氷に、観客からも大歓声とため息。+3.46。
これ1本で14.46を叩き出して、好調な滑り出しです。
次は、今シーズン、力を入れている4T+3T。
きれーに跳び上がった4T!!
と思ったら、手をついて「うわっ」。
しかし、ひょいっと1Tをつけてコンビネーションに。(←2回転か3回転じゃないと0点だけどコンボにしたの偉い)
ほっ。
次のキャメルスピンで振り上げた脚は、
今まで見た中でも、特別美しかったと思います。
ラストジャンプは、6分間練習で何度も確認していたトリプルアクセル。
どーだー??
ちょっと考えるように跳び上がって、
軸が斜めのきりもみ状態だったけど、無事に着氷。
ふぅーっ。
そこからは、私も肩の力が抜けて、
重力(Gravity)に身を任せながら楽しめました。
ステップは、緩急がついて、ふんわりと空気を押しながら、
甘く、時に力強く。
シャープで魅力的なツイヅルに歓声。
そういえば、滑りながら空気を押せる人って、昌磨の他に思い浮かばない。
(あ、ステファンがいた)
スピンが1つレベル3になったのは、ポジションの変化のせい??
ちょっとわからないですが、もったいなかった。
終わって、ちょっと苦笑い。
一番力を注いできたコンビネーションにミスが出たから、
後で、相当悔しがるんだろうなぁと、
uno裏方チャンネルの映像が頭に浮かんで、にやにやしちゃいました。
キスクラでも、満足していない表情。
初戦からステファンを大喜びさせちゃ面白くないから、
完璧なSPは、NHK杯に持越しということで(笑)
「緊張感の中で、どれだけメロウでアンニュイな雰囲気を出せるか?」
という私の注目ポイントについては、
試合であのゆったり感は、彼にしか出せないものであったと思う。
ジャンプにミスがあっても、
プログラムの世界観を保てるのが、宇野昌磨の凄さです。
ただ、私が緊張していたせいもあったし、
昌磨自身も、宙を見つめながら移動する場面で、
ほんの一瞬、空気が途切れた瞬間があったように感じました。(違ったら申し訳ない)
「最高の『Gravity』」は、私の中でも次回に持ち越しかな。
トップと約4点差は、逆転可能な位置なので、
こういう状況のときのフリーは、昌磨の中の火の玉がはじけます。
「4回転トゥを課題としてフリーに向けて頑張る」とのことなので、
コンビネーションジャンプも見どころですが、
何しろ、昌磨のフリーが、世界を驚かせるのが待ち遠しくて仕方がない。
舞台背景なしで、リンクに礼拝堂や大聖堂を建立できるのは、宇野昌磨だけ。
昌磨が放つ静寂に、清められたいと思います。