いい演技だった。
『ラストサムライ』。
曲のすばらしさを、三浦佳生が教えてくれたような演技だった。
実は、SP『Conquest of Spaces』の時から、
「顔つきがすでに“ラストサムライ”だな」と感じていた。
そのくらい、現地入りしてから絶好調。
スピードはまさにランボルギーニ。
それを見て、「短期間で完全復活したんだな」と思った。

美しい所作から、眼光鋭くスタートしたフリーの演技。
4回転ループ、パンク。
ただのパンクではない。空気を切るような、激しいパンク。
4回転トゥ、軸が斜めになって両足気味に着氷。
すばらしいスピードで飛び込んでいった4回転サルコウ、パンク。
ただのパンクではない。かなりの飛距離だった。
切れ味鋭い3A、成功したと思ったのに転倒。
前半、すべてのジャンプに失敗!
しかし、勢いは衰えなかった。
後半、うりゃー!と、ものすごいスピードで飛び込んだ高速回転の4回転トゥ、転倒。
コンボに出来ず。
失敗しても、失敗しても、ひるむことなくジャンプを跳び続ける姿に、
“滅びの美学”を見せられているような気持ちになり、
画面から目が離せない。

観客から、温かい声援と拍手が沸き上がり、
それが突撃の合図でもあるかのように、
3F+1Eu+3S成功!
3Lo+2A成功!
終盤のイーグルのエッジの美しさよ!
スピード。天を仰ぐ表情。
鳥肌が立ってゾクゾクした。
ジャンプが成功しなかったとき、勢いを失ってしまう人は多いけれど、
何度崩れ落ちても、ひるむことなくジャンプを跳び続ける姿は、
見ている者に力をくれる。
拍手をしているこちらのほうが、反対に力をもらっているのだ。
こういう場面で、アスリートとしての矜持が見える。
自分にできる精一杯のことをやろうとしたのだろうか、
表現がいっそう輝きを増していた。
演技を終えた瞬間の表情は、
戦い抜いたけれど、味方が全滅した焼け野原に茫然と立っているサムライに見えた。

不謹慎かもしれないが、この『ラストサムライ』は、最高に美しかった。
キスアンドクライで、唇をかみしめ、
点数と順位が出ると、こらえきれずに涙がこぼれているように見えた。
そうだ。ここはフランスじゃないか!
私は、宇野昌磨を思い出していた。
2019年、涙のGPフランス大会。
だから、ブログのタイトル、同じにしてみました。

あれは、昌磨が異次元のスケーターに進化するスタート地点だった。
佳生くん、昌磨も高志郎君もデニスもいなくなったシャンペリーに行こうぜ!(冗談)
私には、ここからゆるやかに上り調子になり、
ジャンプも表現力もそなえたトップスケーターに進化する佳生くんが見える。