まず初めに。
友野くん、ここまで素敵なオリンピックシーズンを見せてくれてありがとう。
素敵な『Halston』を見せてくれてありがとう。

つらい。
会場を埋め尽くさんばかりの真っ赤なTOMONO応援バナーの波を見て
ちょっとエモーショナルになりすぎたのかな。
研ぎ澄まされた空気のなかで
ピアノの鍵盤の音がコツン、コツンと響いて、
無常にもジャンプの着氷をはじいていく。
私は祈りながら、
友野くんの動きを、ただ見つめていました。
しみしみ しみしみ 全身にしみわたる『Halston』。
演技が終わって、友野くんが泣いている。
私のまわりの人たちも、泣いている。
観客席を埋め尽くした赤いバナーが、もう一度、揺れている。
友野くん、ありがとう。友野くん、わかっているよ。
私も、マスクの下は、涙、涙。
平池コーチのもとへ滑って行きながら、泣いている友野くん。
「ごめんなさい」。
平池コーチが友野くんを抱きしめる。
ミーシャも、やさしく抱きしめる。
この感情は? わからない。
悲しいでもなく、残念でもなく、ただつらすぎて、
感情がどこかへ飛んでいっちゃったよ。ぼーぜん。
こんなにみんなに愛されているのに、世界ランキング上位なのに
オリンピックとのタイミングがなかなか合わない。
勝負の世界だから仕方がないことだけれど。
表彰式を見るのかつらくて、一足先に会場を後にしました。
苦しい数シーズンを乗り越えて『火の鳥』で羽ばたいた駿くんや、
起死回生の『シェルブールの雨傘』を見せてくれた佳生くんを祝福したい気持ちはものすごくあるのに、いや、ほんとにものすごくあったのに、
本日のハッピーエネルギーが枯渇してしまったんです、ごめんなさい。
同じような方々は多かったのか、
駅に向かう人はとても多くて、土砂降りの中、なかなか前に進めなかった。

赤い友野くんトートを持った人が多かったと思う。
抱き合って泣いている人、友達をなぐさめている人もいました。
いちばん多かったのは、無口になっている人。
みんな同じ気持ちなんだろうな。