オオナゾコナゾ

種子島ぴー/九州出身、東京在住。夫と二人暮らしです。旅行のこと、フィギュアスケートのこと、香港のことを中心に、右から左へ流せなかった大小の謎やアレコレを、毒も吐きながらつづります。

今夜、心を占めているのは、友野くんのHalston

きょうの男子フリー最終グループは、とんでもなくすごかった。

と、つくづく思う。

 

神々の戦いの余韻にひたりながら、きょう一日を振り返るとき、

私の心を占めている演技、繰り返し頭の中で流れるメロディは、

友野くんのHalstonだ。

 

 

最終グループは、どの選手もすごかった。

けれど、ジャンプを主軸に置いて、私は演技を見ていたと思う。

 

昌磨は私にとって特別なので、置いておくとして、

 

他の選手は、「4回転サルコウ決まった」「ノーミスだ」といったことに感動しつつ、

ジャンプとジャンプの間の表現に目を向けていた。

 

その中で、友野くんの演技は唯一、“作品”として味わっていたことに気づいた。

 

観客とコネクトすることにかけて、

友野くんは、誰もが認める力を持っている。

 

今までは、エンターテイメント性の高い音楽で滑って、

より、観客を盛り上げてきたと思う。

 

その友野くんが、静かで抑揚のない曲を滑ったら、どうなるのか。

 

このHalstonという曲は、美しく心に残る曲ではあるが、同じ旋律の繰り返し。

 

切なく、はかなく、耳を澄まさないと聴こえないような曲なのに、

友野くんは、いとも簡単に観客とつながり、引き込んでしまう。

 

 

Halstonを演じる友野くんを見ていると、

深夜に一人で部屋にいる自分が見える。

 

誰もが持っている孤独な一面。この世界で独りぼっちのように感じながら、

「でも、まだ完全に一人ぼっちではない」と信じられる何か。

そういうやさしさが、心に、体に、しみてくるプログラム。

 

コリオシークエンス、氷の上を飛んでいるようでしたよね。

友野くんのかすかな微笑みに、鳥肌が立って、泣きたくなる。

たぶん、目線を上げる位置がうまいんだろうな。

目線が下過ぎると内向的になり、上げ過ぎると笑顔になってしまう。

自分の内面と対峙しながら、観客ともコミュニケーションを取っている、絶妙な世界観。

 

ジャンプが決まったときの拍手が、

熱狂的なのに、作品を邪魔しないように鳴り止む繰り返しで、

他の選手のときと、違うと思った。

 

終盤から、客席の拍手がどんどん大きくなって、止まらなくなって、

画面を通して聞くと、古いラジオやレコードから流れるノスタルジックなノイズみたいで、

観客が一緒になって、音楽をつくっているみたいだった。

 

演技が終わっても、笑うでもなく、派手なガッツポーズをするでもなく、

舞台俳優のように観客と向き合い、放心したような表情で前髪をかきあげる姿が、

まだHalstonの世界にとどまっているようで、かっこよかった。

 

表彰台に乗れるかも。世界選手権に行けるかも。と思ったけど、

これだけの演技をしても世界選手権に届きそうにないのが、やるせなくもある。

 

今までは、グランプリ大会のHalstonを何度も見ていたけれど、

今日からは、全日本選手権のHalstonを、繰り返し見ようと思う。