オオナゾコナゾ

種子島ぴー/九州出身、東京在住。夫と二人暮らしです。旅行のこと、フィギュアスケートのこと、香港のことを中心に、右から左へ流せなかった大小の謎やアレコレを、毒も吐きながらつづります。

坂本花織と私たちをつなぐ時間

かおちゃんが登場した瞬間から、涙があふれてあふれて、どうしようもなくて。

その感情をどうしようもないままに演技が始まりました。

会場の人たちは、大丈夫だったでしょうか…。

 

 

『Time To Say Goodbye』。

かおちゃんも、いつもと雰囲気が違ったね。


最初のルッツがポップして、実況のマーク・ヘンレッティさんが「はっ」って息をのんだ。


観客席が映ったら、かおちゃんの一挙手一投足を見つめながら、「うん、うん」ってうなずいている人が何人もいて、それ見てまた滂沱の涙が。

 


演技が終わって、かおちゃんが泣いてて、

私も泣いてて、ヘンレッティさんも泣いてるみたいだったし、
なんだか試合じゃないような不思議な時間だった。

 

 

もう、これは別に試合じゃなくていいし、

得点もどうでもいい。

ただ「ありがとう」と寂しさといろんな感情が混じり合った、

坂本花織と私たちをつなぐ時間だった。

 

園子先生も、わかっているよ、というように

かおちゃんを抱きしめていた。

 

(演技後のマーク・ヘンレッティさん)

今週、私は初めて坂本花織の表情に“悲しみ”が浮かぶのを見ました。
これまで彼女は、常に輝くような笑顔で、すべての瞬間を心から楽しんでいるように見えたのです。
しかし今回は、「応援してくれる観客の前で最高の演技を見せたい」というプレッシャーが、ほんの少しだけ彼女に重くのしかかってしまい、プログラム冒頭でのミスにつながったのかもしれません。

このショートプログラム『タイム・トゥ・セイ・グッバイ』は、私の中では彼女のキャリアの中で“最高のSP”です。
これまで数々の素晴らしいプログラムを滑ってきましたが、それでもこの作品は特別です。
ただし…、最初のジャンプのミス――あれは本当に痛かった。
あれは、彼女らしい完璧な演技の始まりではありませんでした。


この観客の前で、涙を誘うような“美しい成功”を見たかった。
悲しみの涙ではなく、感動の涙を、です。ああ~なんということでしょう。

こんな形で彼女の悲しい表情を見るのはつらい。彼女は私たちに多くの喜びを与えてくれた選手ですから。