羽生選手の今季フリーが、2015-2016シーズンに歴代最高得点(当時)をたたき出した「SEIMEI」に決まったという。
ショートプログラムも、グランプリファイナルで世界最高得点をたたき出したショパンの「バラード第一番」。
時間差での発表になったが、おそらくは、ずっと前から決めていたことだと思う。
ただ、「ええ゛ーっ」というファンやライバル選手およびその関係者の反応が予想されたので、このタイミングでの発表になったとみる。
出典:時事通信
とても頭のいい選曲・選プログラムだと思う。
曲とコリオが基本的に同じである以上、国際審判は、振付、構成、曲の解釈において、最高点を付けた当時とかけ離れた点数をつけることはできないだろう。
「あなたは、2015年にはコリオにも曲の解釈にも10点をつけたのに、なぜ今年は8.6点を付けたのですか?」なーんて聞かれたら、「疑惑の審判」のレッテルを貼られてしまうからだ。
「4回転ジャンパーか芸術性か」という論争において、たとえ羽生選手が芸術性が弱い選手とみなされていたとしても、すでに芸術性が評価されている作品を滑ればノープロブレム!!
すごく賢い戦略じゃないですか?(感動)
さらに技術点において、ジャンプ構成だけ見ても、当時より4回転の本数が増え、難易度も上がるとなれば、宇宙の果てまで飛び出るような数字が出る可能性は高いかもしれない。
羽生選手のファンは、「もう一度SEIMEIが観たかったから大歓迎」と喜び、フィギュアスケート自体のファンは、「新しいプログラムが観たかったのに」と思うかもしれい。
私はと言えば、「新しいものが観たかった」と思う一方で、「本気で金メダルを獲りにいくんだな」と思ったし、「この戦略は、オーサーのもとで学んだだけあるな」と思ったし、そもそも、「たぶん、同じ曲だろう」と思っていた。
4年間、金メダルの常連としてフィギュアスケート界を引っ張ってきたにもかかわらず、オリンピックの年になって、台頭著しい若手(宇野昌磨、金博洋、ネイサン・チェン)に金メダルをさらっていかれたりしたら、ソチのパトリック・チャンの二の舞になってしまう。
当時の雰囲気は、こんな感じでした。
「金」大本命、本気の滑り…パトリック・チャン : 企画・連載 : ソチ五輪2014 : 五輪 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
それに、ソチでの金メダルは、日本人としては喜ばしかったものの、はっきり言わせてもらうが棚ぼただすかっと爽やかなものではなかった。
SPは完璧でしたが、FSでパトリックがあそこまで大崩れしなければ、金メダルにはならなかっただろうし、羽生選手自身も「僕は納得していません感」が漂っていた。
だからこそ、名も実もある金メダルを手にしたいと4年間頑張ってきたのだろう。
このタイミングで完璧な4回転を次々と決める練習風景を公開したのも、チーム「クリケット」の戦略か。
米国、中国チームに走った衝撃が目に浮かぶ。
4回転ジャンプで並ぶことはできても、「SEIMEI」の10点満点コリオと並ぶ作品を作るのは容易ではない。