オオナゾコナゾ

種子島ぴー/九州出身、東京在住。夫と二人暮らしです。旅行のこと、フィギュアスケートのこと、香港のことを中心に、右から左へ流せなかった大小の謎やアレコレを、毒も吐きながらつづります。

嫌いだった上司の命の恩人になっていた。

こんばんは。大型台風の接近におびえる種子島ぴーです。

 

去年、かつての同僚が若くして亡くなるという、悲しい出来事がありました。

 

知らせを聞いた私は、ショックで奥歯をググーッと噛みしめて砕いてしまい、そこから顎関節症へとつながっていったのですが。

顎関節症になったのでネット情報を見て"アイーン体操"をやったら、顔を脱臼しちゃったよ。 - オオナゾコナゾ

 

彼のお通夜は、はからずもかつての同僚たちが集合する同窓会のようになってしまいました。

 

正直、会いたくない人もたくさんいました。なかでも、元取締役の一人であるタコハゲオヤジは、会わずに失礼したい人物ナンバーワン。

 

同じ会社で働いていたときは、

 

死ねばいいのに。

 

と思ったことが、何回もありました。

 

なので、通夜ぶるまいの席でも、いちばん離れたテーブルに座って、視線が合わないように気を付けておりました。できれば、そこに私がいることなど気づかないままで、お帰りいただければ幸いだな、と。

 

ところが、通夜ぶるまいが終盤に差し掛かったころ、タコハゲオヤジが私のほうへ小走って来るではありませんか。

 

やっ、やばい。

 

身を隠そうと物陰を探していると、あろうことか、笑顔で私の向かいの席に腰かけるではありませんか。

 

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そして、こんなセリフを口にしたのです。

 

俺、今日は、どうしても種子島に会いたかったんだよぉぉ~

 

はぁ? なんだそれ? と思っていると、タコハゲオヤジは勝手に語り始めます。

 

数年前、腸の重い病気にかかり、生死の境をさまよったタコハゲオヤジ。担当医師から「御家族のみなさんを呼んでください」と伝えられた妻は、いよいよ覚悟を決めたそうだ。

 

娘や息子も集まり、本人ももう駄目だろうな・・と思ってベッドに横たわっていたときのこと。なんと、病室のテレビに、私が映ったそうなのである。

 

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番組の中で、私は何かのプロジェクトに参加してキビキビと働いており、とても輝いて見えたらしい。

 

「種子島、頑張ってるんだなー。俺もこのまま死ぬわけにはいかないなー」と思ったら、エネルギーがわいてきて死の淵から引き戻されたと言うのです。

 

「ほんと、ありがとなー、種子島は命の恩人だよ」

 と言われると、悪い気はしませんでした。

 

問題は、そんなテレビに出た記憶が、一切私にないことです。テレビに出たのなら、撮影されたと思うのですが、そんな記憶ないもんなぁ。

 

一応、言っときますが、KリンビールのCMに出た件とは違います。

香港ひと昔話(8) 番外編 有名ビールのCMで香港人になった話 - オオナゾコナゾ

 

しかし、テレビで見た内容や場所は、当時の私の状況と一致していました。

 

よし! この際、いつのまにか撮影されていたことにしましょう。

でもって、知らないうちに放映されていたことにしましょう。

そして、望んだわけでもないのにタコハゲオヤジの命を救ったことにしましょう。

 

「死」を突きつけられた悲しみの場所で、「よみがえった」話はまことに喜ばしいものでした。


しかも、タコハゲオヤジは元・上司であって、今や何の上下関係もありません。

 

ということで、お酒も入って上機嫌のタコハゲオヤジに、〝命の恩人〟である私は言いたい放題。

 

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「俺、あんときほんと、危なかったんだよ」

「惜しい!」

「いやー、ほんと、種子島に救われたわ」

「しまった。そんなつもりはなかったのに」

 などなど。

 

ずっしりと重い悲しみの中で、あちこちから笑い声のひびく不思議な通夜でありました。

 

亡くなった元同僚が、こんな機会をもうけてくれたのでしょうか。

はー、生きてるだけで幸せ。つくづく思う、秋の夕暮れ。