オオナゾコナゾ

種子島ぴー/九州出身、東京在住。夫と二人暮らしです。旅行のこと、フィギュアスケートのこと、香港のことを中心に、右から左へ流せなかった大小の謎やアレコレを、毒も吐きながらつづります。

The Winner Takes It All. 勝者はすべてを奪っていく。ネイサン・チェンの衣装問題、複雑な思いで幕。

こんにちは。フィギュア女子シングルは、順当な3人が表彰台に上がり、順位はともかくほっとした種子島ぴーです。

勝者はすべてを奪っていく。

男子シングルの試合が終わって数日間は、頭の中でアバの「The Winner Takes It All.(勝者はすべてを奪っていく)」がループして流れていました。以前、長洲未来選手もこの曲を使用していましたね。

The winner takes it all.
The loser has to fall.
It’s simple and it’s plain.
Why should I compare.

(独自訳)

勝者はすべてを奪っていく。

負けた者は、舞台から降りるしかない。

単純で明快なルール。

何を言えるというのだろう(何も言うことはできない)。

 

66年ぶりの2大会連続金メダルに、ほかの選手のことなどどこかへ吹き飛ばされちゃったように日本中がわいています。

「なんかおかしくない?」なんて言えば、非国民になっちゃいます。あの佐藤コーチまで、「スピードを欠いていたようにも見えたが、そのことでかえって、つま先や指先まで気配りが行き届いた」と、どこかでコメントしていらっしゃいましたが、そういうルールでしたっけ?

カフェで、「ハニュー君、よかったわよねー、怪我してたんでしょ」と盛り上がる年配の女性グループの中で、「フェルなんとか君だっけ、スペインの? あの人のほうが芸術性があるように見えたけど」と言ったおばさんが、袋叩きにあってました。

こわー。何も言っちゃなんねぇ。演技を分析しちゃなんねぇ(笑)

そういった喧騒の中、ループする「The winner takes it all.」と共に、フリーで6度(私はそう思っています)の4回転を成功させたネイサン・チェンとか、団体戦と合わせて4回も滑らされちゃったミハイル・コリヤダの顔が浮かんできて、時おりブルーな気分に。

平昌オリンピックの演技で一番輝きを放っていたのは、息もつかせぬネイサン・チェンのフリー「小さな村の小さなダンサー」。
グランプリシリーズでは、役柄を演じ切れていないというか、情景が浮かんでこないプログラムで、「失敗作だ」と思っていました。
が、皮肉なことに、ショートの失敗で追い詰められた中で、「中国にルーツを持つ青年が西洋文化の中で葛藤し、アジアの舞台で輝く」という作品は完成してしまったのです。

ショートであそこまで崩れていなければ、現時点での最高峰はネイサンだったと思います。でも、スポーツに「もしも・・・」はないからね。仕方がない。

そして、長らく小懸案事項であったネイサンの衣装問題は、「土壇場で衣装チェンジを繰り返す」という、予想外の結末で幕を閉じました。

ショートで失敗して、「ソチの浅田真央のようにフリーで神演技を見せて」と、私を含め多くの人が祈ったと思います。それがさらにネイサンにプレッシャーを与えてしまうのではないか・・・・と、心配でした。
「ソチの浅田真央状態」にさらに、「ソチの浅田真央のように」というプレッシャーがのしかかって、100万トンくらいの重圧だっただろうか。

が、驚いたことに、みなさん書いていらっしゃるように、フリーで現れたネイサンの衣装は、浅田真央のEX「バラード第一番」を彷彿とさせるデザイン。これは!!! 運命の予感。

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いやー、もうね・・・どうですか、ニックさん? 

というわけで、ニック・ベルレオスさんのネイサン衣装評をチェックしないわけにはいきませんよね(笑)

 

「ヴェラ・ウォンでこれなの?」

ICE STYLE.....2018 Winter Olympics Figure Skating Costumes RECAP: MEN'S COSTUMES | Nick Verreos


以下の翻訳は、私が勝手に意訳したもので、大好きなニック・ベルレオスさんは一切の責任を負っておりません。

ネイサンは、冬季オリンピックのショート「ネメシスbyベンジャミン・クレメンタイン」で、この白黒の衣装を着たじゃない。デザインは、ヴェラ・ウォンと彼女のチームよ。

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あーたたちも知っての通り、ヴェラ・ウォンはフィギュアスケートの衣装では知られた存在なの。1994年オリンピックの銀メダリストだったナンシー・ケリガンとか、ミッシェル・クワン(彼女の場合は、いろんな場面での衣装を手がけているわ)、今はヴェラのところで働いている2010年オリンピックチャンピオンのエバン・ライサチェクなんかで有名よね。

この衣装の特徴は、なめらかなライラク製の生地で出来たブラックの長袖とモックネック(タートルネックみたいな感じです)ね。片側は、大胆に袖までホワイトになっているの。トップスに合わせて、ボトムはブラックのぴったりしたパンツを履いているわ。

すっきりと直線的に見えるわよね。ネイサンに似合っているし、前回、ショートプログラムで着た衣装からチェンジしているわ(あたしが「衣装変えてちょーだい」って、何度も叫んだからかしら?)。それも、ヴェラ・ウォンのデザインだったけどね。


フリーは、映画「小さな村の小さなダンサー」のサウンドトラックbyクリストファー・ゴードン。こっちも、新しい衣装を見せてくれたわ。またまたヴェラ・ウォンだけど。前回の全米選手権2018で着た衣装とは別よ(あれもヴェラのデザインね)。 


これまた、白と黒よ。太い白い立襟にポイントを置いて、ブラックのトップスとパンツ、それに袖は途中からグレーになってるわ。

すっきりして、方向性の明確なデザインはいいと思うのよ。だけど、思い切って言っちゃうけど、どちらの衣装もちょっぴり残念だったわ。「ヴェラ・ウォンでこれ?」って。

多くのファッションフリークは、何かもう一味、期待していたと思うの。この2つの衣装は、期待したようなものじゃなかったわ。

もっちろん、これがヴェラ・ウォンの美学であり、ネイサンらしさであるってことは、とっても理解しているわ。ごてごてした飾りやスパンコールが付いていないっていう意味ではね。「ヴェラ・ウォン&ネイサンぽい」の意味がわからない人は、前回の全米選手権フリーの衣装を見てちょーだい。これもヴェラ・ウォンよ。(引用翻訳ここまで)

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ニックさんの気持ちとしては、ヴェラ・ウォンのデザインなら、もっと一味効かせられたんじゃない?ってことだと思う。

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この真ん中がエヴァン・ライサチェク

バンクーバーのライサチェクの「ヘビ」的な驚きね。私もそれは同意します。

そして、直前で新しい衣装にチェンジするのはどうかなと。今回のネイサンは、衣装の首や腕へのフィット感をすごく気にしているように見えました。

それが緊張からなのか、着心地が悪かったからなのか、気にいってなかったからなのか、着なれていなかったからなのかは分かりませんが・・・。

 

ただ、ローリーが「小さな村の小さなダンサー」を選んだことも、衣装デザインをヴェラに頼んだことも、必然だったのかもしれません。