さて、前編の続き。ここからが後編『BEYOND The Final』開幕後のお話です。
オープニングの『Sing, Sing, Sing』で高揚感いっぱいにスタートし、
曲を追うごとにショーのすごみが増していって、
圧倒され続けていく展開の『BEYOND』。
出演者全員が、一瞬たりとも気を抜かない、
0.01秒たりともぼんやりした表情を見せないアイスショーは、
『BEYOND』以外にないと思います。
グループナンバーで、能面のような顔をして滑っている人なんて、誰一人いないです。
全員が120パーセントの力で挑む、本気のショー。
私が、前回『BEYOND』を見たのは、3月です。
あれから4カ月経っているわけですが、
一人ひとりの個性と強みが、より鮮明になっていました。
今井遥さんの『ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア』は、
メリハリと魂の込め具合が、3月に見たときとは別物で、
あの演技によって、私の中の鑑賞スイッチが「カチッ」と入りました。
完全に自分のものにしていて、浅田真央さんの影は一切ありませんでした。
前回、ほれぼれした柴田嶺さんは、今回も、すべての演技に魅了されました。
演技、表情、スケーティング、すべてがすばらしい。
バレリーナとしても通用すると思う。
「こんなすごい人、どこに隠れていたの?」と思いましたが、
私は選手時代に、シングルでもペアでも、何度も見ていたはずです。
でも、今が最高にすばらしい。『BEYOND』で花開いた一人だと思います。
このままこの人をアイスショーの世界から手放してしまうのは、もったいなさすぎる。
高橋大輔氏の「エンタメとしてのアイスショーを普及させて、引退後のスケーターに活躍の場を」という志が、いかに意味を持つことか。
田村岳斗氏は、適度に省エネしながらの😆コメディセンスが、ピカイチでした。
どんなポーズで客席の前を通っても、笑ってしまった。申し訳ない。
『白鳥の湖』のロットバルト役で柴田さんと絡むとき、
柴田さんが楽しそうに岳斗氏を追いかけていたので、
「もしかして、黒鳥オディール(ロットバルトの娘)の役も岳斗氏が兼ねているのか?」と錯覚しましたが、ちゃんと真央ちゃんが登場しました。
男性3人が3様に表現するシュトニケの『Tango In A Madhouse』も、
Madhouseっていう意味では、
岳斗氏が一番Madhouseかも…と思いながら見ました。
ふぅぅぅ…『白鳥の湖』も、すばらしいですよね。
すばらしいとしか言いようがない。
真央ちゃんの32回のグランフェッテを氷上で再現したシーンなんて、
ほかに誰ができますか、あんなこと!!
柴田さんのソロもすばらしいし、
小山渚紗さんの白鳥の腕(翼)使い、すごかった。
肩や腕の動かし方が表面的ではなく、動物、鳥の動きそのもの。
筋肉の動きを、凝視してしまいました。
華があって、動きの美しいスケーターさんです。
小林レオニー百音さんの『カルメン』は、圧巻。
前回見たときも、「迫力があるなぁ」と思いましたが、
今回は、脳裏に焼き付くほどの強さで、「私を見て」という光を放っていました。
存在が3Dで、客席に飛び出してくる感じ。
彼女に対しても、「こんなすごいスケーター、どこに隠れていたの?」と思いました。
山本恭廉さんは、前回より、印象が格段に強くなったスケーターさんでした。
彼も含めて、ジャンプを飛ぶ出演者には、
「作品に入れたからには絶対に成功させる」という集中力が感じられたのですが、
彼が要所要所で、百発百中で決めるジャンプが、
山椒のようにピリッと場を引き締めます。
スケーティングも美しい。高速スピンも美しい。
中村優さんは、怪我で途中から休場。
大事なポジションにいるという気持ちの強かったと思うので、
存分に滑ることができずに、ちょっとつらそうに感じました。
だけど、観客はみんなわかっているから、出演者紹介の場面で、
彼への拍手は一段と大きかったです。
最後に、真央ちゃんがみんなを送り出す場面では、
優さんにだけ、真央ちゃんが「うん」と深くうなづいているのを目撃し、泣きそうになりました。
「自信を持って挨拶して」「私はちゃんとわかっているから」みたいな感じ。
ああいうところが、座長ですよね、真央ちゃんは。
エルニは、魅せることに一切のためらいがなく、
どんな衣装も着こなしながら、場を華やかにする存在。
今回、目の前で転倒したのですが、何事もなかったように、
0.01秒も作品の世界を途切れさせなかったのを見て、表現者だなぁと思いました。
彼も、『BEYOND』の後、どうするのでしょうか。
欧州のアイスショーで活躍するのかなぁ…なんて思いながら見ていました。(観賞中に雑念ありすぎ)
松田悠良さんは、現役時代の記憶がまだ新鮮です。
とにかく、うまい。スピードもあって、キレキレ。
ショーの水準をゴージャスにしていると思います。
生き生きとした『チャルダッシュ』が印象に残りました。
今原実丘さんは、明るいナンバーには欠かせない、
かわいらしくコケティッシュな印象。
『BEYOND』のメンバーに真央ちゃんが選んだのがわかる、
笑顔がきらきらして、アイスショー向きのスケーターだと思います。
浅田真央すごすぎ
今回改めて、浅田真央という存在に感服しました。
「努力の天才」と称されますが、「天才」でもあると思いました。
「見る人に喜んでもらうために」ということに対して、
氷の上で、こんなに真摯でまっすぐな人は、そうそういないと思います。
喜んでもらうための要素には、企画とか演出とかあると思うんですが、
プラスして、滑る技術、表現力ということに対して、
間違いなく世界一だと言い切れます。
『シェヘラザード』も圧巻だけど、『白鳥の湖』も圧巻だし、『バラード第一番』も圧巻なら、『カプリース』も圧巻。
圧巻がミルフィーユのように、後から後から畳みかけてくる。
究極を超えた体力と集中力で、こういうのを見せられたら、
現役選手も「スケジュールが大変」とか言えないから、お気の毒になります(試合とショーは違うとは言え)。
それでもって、前回見た時よりも、『シェヘラザード』の毒気は増し、
『白鳥の湖』の一人二役はコントラストが際立ち、
『バラード第一番』は、より滑らかに。
『カプリース』の自信に満ちた“客あおり”なんて、最高のエンターティナーぶり。
北サイドの客席にお時期をして、「えっ、ちょっと拍手が小さくない?」みたいな渋い表情。
もっと、もっと、拍手、拍手と手であおってから、シーンと静かになったところで、じゃーん「拍手~」。「よっしゃー、合格」みたいな感じで😆
次は南サイドの客席。続いて、正面の客席に行くかな~と思ったところで、
一旦じらして…舞台裏に控えているメンバーに向かって、
「拍手と歓声が聞こえないよー」というゼスチャーで耳をすまし、
「いぇーい」と声が聞こえたところで、正面客席へ。
こちらでも、「えーー?拍手小さいでしょ」みたいな、いたずらっぽい表情からの、「拍手~」。
リンクから去っていくときの、愉快で悪い表情も最高。
こんな感じは、前回公演ではなかった思う。
進化していく『BEYOND』。
100回目の公演でした。
さて、さて、さて。最後のプロが終わったところで、
舞台背景が変化して、なんと、なんと、
祝!BEYOND 100公演
の文字が。「びっくりしたぁ」と真央ちゃん。
この文字が出るのは知らなかったのかな?
柴田さんが泣いているのがわかりました。
みんなの表情も、みるみる変わっていきます。
私は、100回目公演だから、この日を選んで見に来たわけではなかったので、
思わぬ幸運に興奮。
マイクを手にした真央ちゃん。
「きょうは、もうあと3公演だけだなぁと思ったら………、滑りながら寂しくなっちゃって」。
メンバーも、涙をぬぐいます。
毎回、メンバー一人が指名されて、BEYONDや仲間に対するスピーチをするのですが、
今回は、今井遥ちゃん。
真央ちゃんに対するメッセージで覚えているのは、
- 私は引退するとき、もうスケートをするのは今日で最後にしようと思ってやめたので、練習もまったくしていなかった。
- だから、真央ちゃんにアイスショーに抜擢していただいたとき、迷った。
- でも、尊敬し、憧れてきた真央ちゃんと一緒だからこそ、やることに決めた。
- 真央ちゃんとは、昔から、スケートの試合で一緒になることがあった。
- 初めてシニアに上がって、何をどうすればいいかわからなかったころ、初めてのグランプリ大会でも、「何時にご飯に行こう」とか声をかけて、めんどうを見てくれた。
- 緊張する私に、「フランス大会は、試合よりもエキシがメインだから」と言って(リラックスさせて)くれた。←真央ちゃんは、「えっ、私、そんなこと言ってないよ」と焦る。
- 私が悩んでいると、美味しいご飯に連れていってくれて、6時間も話しを聞いてくれた。
- スケートも上手くて、性格もよくて、それは今も変わりません。
- お姉さんみたいな存在です。
いやー、もう、出演者も私も、涙、涙。
拍手もし過ぎて、全身汗だく。手のひらの感覚が、今日もないです。
アイスショーって、こうでなくちゃ。
時々、空虚な気持ちのまま、人であふれる駅に向かって行進するアイスショーがあるけれど、
昨日は、会場を出た後、心地いい風に吹かれて、しばらく外を散歩したいような気持ちでした。
明日は、いよいよ。
本当に、いよいよ。
大千秋楽です。明日16:30からの公演が、ライブ配信で見られます。
浅田真央アイスショー「BEYOND The Final」千秋楽公演 | PIA LIVE STREAM(ぴあライブストリーム)
在宅でも、アイスショーなんて見ている時間がない方もいらっしゃると思いますが、
アーカイブも7月20日(木)23:59まで残してくれて、3,000円です。
たぶん、おそらく、まちがいなく、浅田真央集大成の大千秋楽公演になると思います。