こんばんは。
さいたまスーパーアリーナで、ペアと男子のSPを観戦してきました。
スケートとスケーターを愛する人たちが集まった、すぅぅばらしい大会でした。
選手はもちろんすばらしいけれど、観客もすばらしい。
私は、午後から8時間弱の応援で拍手をし続けて、今、ほぼ動けません。
でも、多くの人は、午前中から11、12時間も、
応援を続けているんですよね。
観客の想いが創り出した空間が、
すばらしい演技を生み出す一因だと感じました。
さて、昨日、公式練習中に足首を痛めて、
大会参加が危ぶまれていた宇野昌磨選手。
会場に向かう電車の中で、
「公式練習に登場して、ジャンプをすべて着氷」というニュースを目にしました。
それでも、怪我を負っていることに変わりはない。
結論から言うと、応援している私が、気持ちで負けてました。
すみません。
宇野昌磨は、怪我ですべてをゼロにする男ではありませんでした。
試合は、第4グループぐらいから、演技のレベルが一気に上昇。
ケヴィン・エイモズ、ジェイソン・ブラウンが、
地割れするようなスタンディングオベーションを起こす演技で、
90点台半ばの得点を叩き出すと、
試合のバーが一気に上がりました。
「昌磨、大丈夫かな」と、一抹の不安がよぎる…。
第5グループに入ると、イリヤ・マリニンが、
ものすごい高さでピクリともしない4回転ジャンプを決めていき、
100点超え。
みなさん、「マリニンはジャンプだけ」みたいな記事を目にしても、
信じちゃだめですよ。
彼は、ジャンプの美しい軸、高さ、安定性に加えて、
スピンもステップも演技の魅せ方にも、秀でています。
もちろん、伸びしろはありますが、
トップクラスであることは、間違いない。
「この演技に、昌磨は勝てるのか?」。
マリニン君の演技に大いに盛り上がりながらも、
一抹の不安が…。
最終グループの6分間練習に登場した昌磨。
「ジャンプは跳ばずに、リンクを流すだけかな?」と思いましたが、
がっつりジャンプを跳んでいきます。
リンクに入る前から、一人、列を離れて、
軽くランニングしながら体を温め、
リンクインするやいなや、すぐにトリプルアクセルを跳びました。
さらに、4T+3Tも美しく着氷し、4Fも成功。
「大丈夫そうだけど、跳びすぎて体力を消耗しないでほしい。
足首へのダメージは大丈夫なのか」と、どきどき。
そして、第一滑走のジュンファンが、
とんでもなくすばらしいノーミス『マイケル・ジャクソン』を献上し、
会場は熱狂の渦へ。室内温度が3度ほど上がりました。
本当にすばらしい、エンターテイメント。
手拍子、楽しかった~。
あと一歩で大台の99.64を叩き出しました。
続いては、キーガン・メッシングさんの『グレース・ケリー』。
このプロが見たくてチケットを買った、と言っても過言ではありません。
客席を埋めるカナダ国旗。
その中で、コミカルかつダイナミックな演技で98.75。
もー、どうなってますか、今日のみなさんは??
世界選手権にふさわしい神演技の連続です。
この90点台の嵐の中、手負いの昌磨がトップに立つイメージは、
まったくありませんでした。(申し訳ない)
マッテオ君の点数を待つ間に、
リンクに出た昌磨は、また4回転を跳び始めました。
今日の試合では、点数待ちの間に本気でジャンプを跳んでいた選手は、
本番で失敗するケースが目立ったので、
「昌磨ぁぁぁ、ジャンプ跳ばないでぇぇぇ」と、心の中で叫ぶ。
しかも、4T+2Tを跳んでいたから、
「4T+3Tじゃないと、マリニン君を超えられないのでは」と、
的外れな心配に陥りました。
昌磨が「3Tで転倒するより2Tで加点」って話していたのを、
もう忘れてしまった記憶力ゼロの私。
怪我してるっちゅーねん(笑)
結果として、4T+2Tは、鬼のGOE 3.39でした。
名前がコールされると、オレンジの昌磨バナータオルが、客席を埋めました。
毎回思うけど、みなさん、どこに隠しているの?
膝の上とか背もたれとかに出している人は何人か見えるけれど、
見えている10倍ぐらいの人が、バナータオルを掲げるわけですよ。
さっきまで、「いや、昌磨バナーなんて、持参してませんけど」って顔しているのに。
不思議です。
演技は、緊張して、「『Gravity』で気だるいバーの雰囲気に酔う」なんてことは、
一切できませんでした。
覚えているのは、
- 昌磨がステファンにサムズアップをして、リンクに出て行ったこと。
- 最初のジャンプに向かうまで、会場の誰も息をしなかったこと。
- フリップをきれいな軸で着氷すると、会場から「おおおおぅ」と、感嘆と安堵の声が漏れたこと。
- 着氷と同時に、昌磨が腕を上げて、シュルシュルシュルとなめらかに回転した背中が美しかったこと。
- あまりにも落ち着いて4Tを跳んだので、セカンドジャンプまでの時間が、永遠に感じられたこと。
- 2Tで降りた後、昌磨がニヤッとしたように見えたこと。
- アクセルが、空を切るように鋭かったこと。成功した後、昌磨がものすごい表情をしたこと。
- 曲の裏声のところの「何回転するんですか」ツイヅルで、ものすごい拍手と歓声が起こったこと。
- クリムキンが短くて、「足首をかばっているのかな」と思ったこと。
- フィニッシュと共に、昌磨が振りかぶってガッツポーズをして、もう一度ガッツポーズをしたので、
「昌磨が納得したなら、高い得点が出るかも」と思ったこと。 - スタオベして、「昌磨ぁぁぁ」と叫んだこと。
文字にしてみると、相当ダメダメなスケートファンですね。
緊張と心配で、脳が停止していたと言ってもいいでしょう。
「転んで脚・足を悪化させてないでほしい」しか考えていませんでした。
昌磨の演技後、泣いている人もいたし、
「よかったね」「よかったね」と、みんな口々に言っていました。
安堵のため息も、あちこちから。
点数がどうとか、誰も考えていなかったと思う。
だから、104.63が出たとき、どよめきが起こりました。
どーなってるのか、宇野昌磨って人は。
ステファンもファンも、昨日は胃が溶けそうだったというのに、
今季最高得点をたたき出しちゃいましたよ。
ステファン、デミさんとなごやかに話しながら、
階段を下りて引き上げていく昌磨の背中を、
信じられないような気持ちで見ていました。
みんなの祈りと願いとエールも、昌磨に届いていたと思っていいよね?
終わったのは、夜の21時。
ライトアップされた、さいたまスーパーアリーナを、
清々しい気持ちで後にしました。