オオナゾコナゾ

種子島ぴー/九州出身、東京在住。夫と二人暮らしです。旅行のこと、フィギュアスケートのこと、香港のことを中心に、右から左へ流せなかった大小の謎やアレコレを、毒も吐きながらつづります。

目標は必ず達成する。それが宇野昌磨。

「自己満足」…客観的評価に関係なく、自らの行いに満足すること。

 

宇野昌磨選手の今シーズンの目標である。

 

 

フィギュアGPシリーズ開幕記者会見で昌磨の口から語られたのは、

「この2年間、自分が思っていた以上の結果を出すことができました。ただ、結果には本当に満足していますけれども、どうしても、自分の演技っていうものに関しては、なかなか満足できるものでは、もう一度見たいと思えるものはしてきていないというのが、僕の感想なので。その理由としては、ジャンプが中心のプログラムになってしまっている。そういうところから、日々の練習のやりがいだったり、試合が終わった後の自分の演技に対する感想っていうのが、ジャンプが跳べたか跳べなかったか、それだけになってしまっているっていうのが、シーズン後半、つらい部分もあったので、このシーズンオフ、いろんなアイスショーに出て、自分にとってスケートっていうものが、何がやりがいが持てるのか、自分が満足できるのかって考えた先に、表現力っていうところを今年は、頑張っていきたいなっていう思いを込めて、こういう言葉を書かせていただきました」

 

昌磨基準の「ジャンプだけだった」も、

たまたま見た一般視聴者が額面通りに受け取ってしまいそうなので、

「おーい、口を閉じてくれぃ」と思ったけど(笑)、

荒川静香さんが、ナイスフォロー。

 

「宇野選手と言えば、表現力に長けた選手なので、すべてにおいて高いスキルで展開していける選手。また、“ジャンプだけ”ってなっているプログラムでもないような、高いレベルのプログラムを滑っているので、“さらに”(という意味)ですね。今、ジャンプに少し余裕が生まれてきたのかな。さらに自己満足するためには、出る試合勝ってるので、後は自分が求めるものを追求するのかな、っていう風に今感じました」

 

(昌磨)「ジャンプを頑張ることが正直、競技の順位、点数を求めるために一番必要なことだと思っているので、この2年間ジャンプを頑張りましたが、本当にこの書いてある通りに、ここからは自己満足のために、自分の表現力ってものを頑張っていきたいなと思っています」

 

(S造)「自己満足、そして、見ている人たちも満足する演技をお願いします」

 

って、だから “自己満足”が目標だって言ってるじゃん😆

好きなようにやらせてやってくれよ。

 

これまでも、キスアンドクライやバックヤードで、

宇野選手が美穂子先生やチーム・ステファンと喜びを爆発させている場面を何度も見てきました。

そして、それは、私をしあわせな気持ちにしてくれました。

満足しているように見えた場面も、何度もありました。

 

だけど、確かに、笑顔で語られるのは、主に“戦い方”であり、周りの人が喜んでくれたことに対してでした。

 

「NHK杯の『オーボエ協奏曲』の彫像ポーズは、自分で見返しても惚れ惚れします」とか、

「『メアトルメンタプロペラーテ』の最後は、神殿を建て終わった宮大工の気分でした」などという話は、聞いたことがない気がする。

(おっと、この例えはおかしい😆昌磨氏は、作品に物語性や意味を持たせないスケーターであると思うが)。

 

いつか、試合から一夜明けたインタビューで、

「昨夜は興奮して、自分の演技を何度も見返しました」なんて言ってくれたら、最高。

 

そんなことを考えつつ、BS放送で、

新フリープログラム「Time lapse/Spiegel im Spiegel」の演技を、改めて見ました。

放送では、「Time lapse(タイムラプス)」」のみの表記でした。

 

(余談ですが、今回のBS放送は、余計なものを排除して、ほぼすべての演技を滑走順に放送してくれて完璧だったと思います)

 

 

新フリー「Time lapse/Spiegel im Spiegel」。

現地で見たときは、体感数秒で演技が終わってしまい、放心状態でしたが、

映像を見て、記憶がよみがえってきました。

 

まず、思ったのは、「顔が良過ぎ」。

昌磨の超アップから始まったので、肌と造形の美しさに驚きました。

 

それは、横に置いておきましょう。

 

前半の「Time lapse」は、力強くモダンで美しく、

私にとって、「まさに宇野昌磨」でした。

Time lapse≒コマ送りで、特徴的なコマ送りコリオもありました。

 

EX『カム・トゥゲザー」やワンピース・オン・アイスのルフィ、

『ボレロ』、『メアトルメンタプロペラーテ!』で磨きあげた、

パワーと体幹と並外れたバランス感覚が生かされているのがよくわかる。

自分の内面をえぐり出して、闇にぶつけているような強さを受け取りました。

 

さらにそこに、『オーボエ協奏曲』や『G線上のアリア』で“マスターピース”を生み出した、静ひつで透明感ある昌磨ベールがかかっている。

 

私の脳内には、「大きな使命を負って、北欧の吹雪の山を越えていく勇者」みたいなイメージが浮かびました。

 

「宇宙」を感じる人も多いようですが、

宇宙感、銀河系感、時空を超える感は、

私は、SP『I Love You Kung Fu』のほうが強いかな。

 

というか、SPとフリーの系統が、似ている印象を持ちました。

演じ分けるのは、さらにハードルが高くなると思う。(ステファン、ハードル上げ過ぎ!!)

 

より斬新で挑戦的なのは、後半の「Spiegel im Spiegel」。

「エクソジェネシス」風の1節に続いて、抑揚のない淡々とした曲が始まります。

 

なんというか…

「プログラム最後の締めで、スピンをして静かに終わっていく場面で使われる音楽」が、延々と続きます。

 

測ると2分22秒ありました。

 

時の穴にぽっかりはまったような、

“ときだまり”に吸い込まれて、

過去を旅しているような気分になる、2分22秒。

 

曲としてのクライマックスは、ありません。

これは、超絶難しい。

ジャッジ受けはそんなによくないと思うし、

観客から手拍子が起こることも、まずないと思う。

 

それくらい難しい曲を、

「表現に挑戦して、自己満足して終わりたいシーズン」に選ぶとは。

恐るべし、宇野昌磨。

 

現時点では、「感動して涙が止まりませんでした」とは言えません。

 

ただ、わかっているのは、彼が宇野昌磨である、ということ。

 

『Dancing On My Own』だって、最初は「中身が薄い」と言われたし、

『ワンピース~』のルフィだって、「配役ミス」と散々言われたけれど、

結果は、ご存知の通り。

 

だから、中国杯なのか、NHK杯なのか、グランプリファイナルなのか、全日本なのか、はたまた最後の最後、世界選手権になるかはわからないが、

きっと私が、鳥肌を立ててスタンディングオベーションをする日がくると思う。

 

書きながら、自分がスケーター宇野昌磨を、

とんでもなく信頼していることに、改めて気づくのであった。