言葉なし。
言葉を失うとは、まさにこのこと。
演技が終わってからも、黙って頭の中の残像をたどるのみである。
宇野昌磨選手のSP『I Love You Kung Fu/Clair de Lune』。
今日の演技は、これまでと雰囲気が大きく違っていた。
いつもは、幻想的でファンタジーの世界に導かれるようだったけれど、
今日は、幻想的ながらも、輪郭がはっきりして、力強さを感じさせた。
冒頭の体の向きを変えながら、2方向を指さすコリオは、
眼光するどく、暗闇の中から、気配なきものたちを呼び寄せるがごとく。
冬の月夜を支配する王のようなたたずまいに、
「これは間違いなく、4回転フリップを決める男だ」と確信した。
そして、本当に4回転フリップを決めた瞬間、泣いちゃったよ(笑)
qマークとか、レベルとか、そういったことを意識せずに、
「1日も無駄にすることなく練習を積んできた」という
最高のプログラムを堪能したかったので、
画面上のカウンターを隠し、正座して見ていた。
どの瞬間も、指先、目線、すべてに、
中国杯、NHK杯、ファイナルよりも意識がいっていたように思う。
空気が凍った月の光の中で、昌磨だけが動いているようで、
ただ、ただ、息を止めて見ていた。
演技を見終わって、こんなにしあわせで、いいんだろうか。
今日は、体感20秒。
いつにも増して、短かったけれど、
ぎゅっ、ぎゅっとすばらしいものが詰め込まれたクリスマスBOXを、
一足早く受け取ったようだった。